めぐる季節

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月SS 君を想い描く桜

春を待つ蓬莱に、少し冷たさをはらんだ風が吹いている…―。 ――――― 楓『でもよかった。じゃあまだここにいるってことか』 ○○『え……?』 ――――― 山まで行ったけれど、結局桜を見ることはできず…… 挙句の果てに、○○は熱を出してしまった...
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月最終話 君に捧ぐ桜

襖の隙間から、室内の明かりが漏れている。 私は薄暗い廊下に立ち尽くしまま、襖を開くことをためらっていた。 (楓さん……) 襖からわずかに見える楓さんの横顔がとても真剣で、声をかけることができない。 ゆっくりと視線をずらすと、楓さんの手元に筆...
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月7話 苦い薬と甘い看病

――――― 楓『でもよかった。じゃあまだここにいるってことか』 ○○「え……?」 ――――― 楓さんが、いたずらっぽい笑顔で私を見つめている。 (どういうこと……?) 言葉につまっていると、彼は私の枕元に腰を下ろした。 楓「はい、薬」 ○○...
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月6話 発熱

楓さんと山に行った、数日後…―。 見上げている天井が揺れているように見える。 (熱のせいかな……) 山から戻るなり熱を出して寝込んでしまった私は、布団の中から出られずにいた。 楓「○○」 襖の向こうから、楓さんの声が聞こえる。 ○○「はい」...
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太陽SS 君を喜ばせたくて

○○が蓬莱から帰る、その前日…―。 (やっぱり咲いてなかったか) (つぼみをつけていたから、もしかすると……って思ったけど) 再び山に行ってみたものの、やはりまだ桜は咲く様子がなかった。 ――――― ○○『楓さんと、桜、見たかったです……』...
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太陽最終話 扉越しの桜

街から戻った後、私は楓さんと一緒に白の一角にある小さな建物へとやって来た。 (ここは……?) 床には作りかけの彫刻が置かれ、棚には表情豊かな茶碗が展示されている。 何より目を惹かれたのは、壁一面に飾られている色とりどりの絵画だった。 ○○「...
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太陽7話 君に見せたいもの

楓さんの姿が、廊下の向こうへと消えていった後…―。 ○○「楓さん……」 ――――― 楓『明日までには咲かないだろう。残念だったね』 ――――― 先ほどの楓さんの言葉が、頭の中で冷たく響く。 ??「○○様、どうかなさいましたか?」 振り返ると...
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太陽6話 冷たい声

廊下から見える中庭には、春の訪れを知らせる鳥が優雅に飛び回っている。 穏やかなそよ風が、私の頬を撫でていった。 (綺麗な風景……) けれど、桜の花はまだ咲く気配がない。 (いつになったら咲くんだろう) 桜の木を見つめていた時、楓さんが通りか...
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第5話 目的地で見たもの

木々の隙間から、大きな夕日がにじんでいる。 山の麓に着いた頃には、すっかり日は傾き始めていた。 ○○「着きましたね」 楓「ああ」 楓さんは口数少なく、念入りに周囲の木々を確認している。 そうしてしばらく辺りを見回した後、首を横に振った。 楓...
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第4話 桜餅

画材屋を出た私達は、山に向かって歩き出した。 道行く人々は皆、冷たい風から身を守るように背を丸めている。 ○○「寒くなってきましたね」 楓「そうだね。もう少しで着くよ。 そうだ。その前に、あそこで休んでいかない?」 楓さんが指さした先には、...