待ちに待った、収穫祭当日…―。
デネブ「えーっと……カメラは入れたし、望遠レンズも……。 ……あ!」
僕はクローゼットに駆け寄った後、小さめの三脚を引っ張り出す。
デネブ「危な~……うっかり忘れるところだったよ。 あ、でも、こっちの大きい三脚の方がいいかなぁ?」
少しの間、二つの三脚を見比べながら頭を悩ませる。
けれど……
デネブ「……っと、いけない。○○ちゃんを待たせてるんだった。 とりあえず今回は長旅だし、小さめな方にしておこうかな」
僕はバッグに三脚を詰めた後、ファスナーを閉める。
そうして、両手でバッグを持ち上げようとしたものの……
デネブ「あれ? なんか、すっごく重い……。 やっぱり、あれこれ入れ過ぎちゃったかなぁ」
(まぁ、でも……)
(せっかくかわいい衣装ができたんだし、ちょっとぐらい張り切ってもバチは当たらないよね)
(何より、○○ちゃんと初めてのコスプレなんだし……)
デネブ「……っと、急がなきゃ」
(これ以上待たせたりしたら、さすがに嫌われちゃうや)
僕は慌ててバッグを持ち上げると、○○ちゃんの待つロビーへと急いだ…―。
…
……
ロトリアへとやって来た僕達は、二人でお菓子を配り歩いた後、声をかけてきた街の写真屋に、記念写真を撮ってもらうことにした。
けれど……
デネブ「あー、まだまだ硬いよ~。 ハチミツキャンディーみたいに蕩ける笑顔が欲しいんだけどな~」
僕は○○ちゃんの緊張をほぐすため、くすぐるように彼女の頬や首筋に触れる。
○○「は……恥ずかしいです」
頬を赤らめながら笑う○○ちゃんは、本当にかわいくて……
(全然、恥ずかしがることなんかないのになぁ)
(だって今日の君は、いつも以上に…―)
デネブ「かわいいんだから自信もって! 魔女になったつもりでね」
僕は上目遣いで○○ちゃんを見つめながら、彼女の衣装を整える。
すると○○ちゃんは緊張が解けたのか、自然な微笑みを見せてくれた。
デネブ「そ! そういう顔! いいね~。 じゃあ、ほら、そのままカメラに向かって笑ってよ。あっちにも僕がいて微笑みかけるようにね」
○○「は、はい」
○○ちゃんと僕は、カメラに向かって微笑む。
すると、写真屋も笑顔になり……
写真屋「二人とも、いい笑顔ですね。撮りますよ」
シャッターがおりた後、やっぱり少し緊張が残っていたのか、○○ちゃんは大きく息を吐いた。
デネブ「サイコーの写真が撮れたよ」
○○「衣装がいいからですよ」
デネブ「○○ちゃんの笑顔がよかったからだよ」
(それに……)
デネブ「僕に微笑むようにって言ったら、想像以上に可愛くなった」
自分の言葉に、胸の奥が甘く締め付けられ、後から後から、幸せな気持ちが溢れ出てくる。
(だから……)
デネブ「だから、ご褒美」
僕は短くそう言った後。
○○ちゃんの目元に、ついばむような淡いキスをした。
デネブ「……楽しいね♪」
○○「……っ」
耳の先まで赤くなった○○ちゃんに微笑んだ後、再び二人で街の中を歩き始める。
そうしてしばらくの間、収穫祭を楽しんだ後…-。
デネブ「あ、そうだ!」
○○「……? どうしたんですか?」
デネブ「うん。さっき、カメラの方に僕がいるつもりでって言ったけど……」
僕はそう言いながら、バッグの中を探り、カメラを取り出して顔の横に掲げる。
デネブ「君のこと、本当に撮らせてもらってもいい?」
○○「え……?」
デネブ「君の笑顔、すごくいい感じだったから。 僕、もっともっと可愛い姿を撮りたくなっちゃった。 あの写真屋さんに負けないぐらい、可愛い姿を撮っちゃうから……覚悟しておいてね♪」
悪戯っぽくそう言うと、○○ちゃんは恥じらうようにうつむく。
けれど……
僕が顔を覗き込むと、少しだけ困ったように笑いながら頷いてくれたのだった…―。
おわり。