デネブ「ねえねえ、○○ちゃんも、せっかくだからコスプレしようよ!」
○○「コスプレですか!?」
突然の誘いに戸惑いながら聞き返すと、デネブさんは平然とした様子で頷いた。
デネブ「収穫祭は仮装して参加! つまりコスプレだよ、コスプレ! 僕、コスプレ大好きなんだよね~。 今日は堕天使ってテーマだったけど……僕なりのアレンジ、どうかな?」
デネブさんが少し腰を揺らすと、衣装がふわりと舞った。
蝶の羽のように翻った裾が美しくて、目で追ってしまう。
デネブ「ね? 君も一緒にどう?」
見とれていた私の顔を、彼の邪気の無い笑顔が覗き込んだ。
○○「でも……私で怖くできるかな?」
デネブ「そこがボクの腕の見せどころじゃない? ちゃんと好み通りに作る手伝いをしちゃうよ」
○○「そうですね。デネブさんと一緒ならいいかも」
デネブ「じゃ、決まり~。早速、作戦会議しちゃおー」
○○「あ、デネブさん…-!」
上機嫌のデネブさんに手をぐいぐいと引かれ、とあるカフェへと連れていかれた…-。
私達は甘い匂いの漂う店内に入り、栗やかぼちゃを使った収穫祭特別メニューを選んだ。
デネブ「作戦会議開始ね!」
オーダーをすませると、デネブさんが白磁のようにすべらかな顔を、身を乗り出して近づけてくる。
とくんと鼓動がひとつ大きく鳴った。
デネブ「どんなテーマにしよっか?」
○○「テーマ……」
デネブ「う~ん、僕と合わせて、黒い羽根のドレスなんてどう?」
聞いているだけで楽しくなるくらい弾んだ声で、そう提案される。
○○「デネブさんの国は白鳥がたくさんいたのに、白い羽の天使じゃないんですね」
デネブ「黒い羽の方が、かっこよくない? だから、堕天使」
○○「堕天使……」
自分のその姿を想像してみるけれど、あまりイメージが湧いてこない。
(私には……もっと普通の感じの方がいいかなあ)
デネブ「……ふふっ」
デネブさんは、そんな私の考えを見透かしたように笑っている。
デネブ「○○ちゃんは……そうだね、かぼちゃと魔女をイメージしたやつなんかどう?」
○○「かぼちゃと……魔女?」
デネブ「うん!」
(どんなのになるんだろう)
首を傾げていると…-。
デネブ「大丈夫。僕が君に似合うように作るから、全然へーき。じゃ、決まりね」
デネブさんは満足そうに、にこっと微笑んだ。
まるで黒い羽が散ったような魅惑的な笑みに、どうしようもなく惹きつけられていた…-。