幻惑の国・ロトリア 宙の月…-。
森に畑にと、実りが豊かになるこの季節、ロトリアでは収穫祭が開催されるという。
(私にも招待状が届いたけど、仮装パーティだなんてどうしたらいいのかな)
戸惑っている私の元に続けて届いたのは、星の国、ノーザンクロスのデネブさんからの手紙だった。
デネブ「ロトリアの収穫祭、君も誘われたんだよね。一緒に行こうよ!」
(手紙には、このあたりで待ってるってあったけど……)
楽しげな音楽が流れ、お祭りムードで賑わう街中で、私は背伸びをしながら辺りを見回す。
そのとき、肩に触れる指先を感じて振り向くと、デネブさんが珊瑚色の瞳を細めて私に微笑んでいた。
デネブ「待ってたよ。ねえねえ、この衣装どう? 堕天使をテーマにって言われて急いで作らせたんだ~」
それは青磁色に金の縁取りが美しく、内側は漆黒の夜空を従わせるようなあつらえで彼の白い肌に似合っている。
(まるで、違う人みたい……)
いつもより大人びた印象に、胸が少し早鳴った。
○○「すごく素敵ですね。一度見たら目が離せなくなりそう」
ため息交じりに言うと、デネブさんは何でもない様子で、顔を近づけてくる。
頭のベールが風をはらんで、ふわりと誘うように揺れた。
○○「ねえねえ、○○ちゃんも、せっかくだからコスプレしようよ!」
(コスプレ……?)
デネブさんは衣装の襟元を直しながら、悪戯な視線だけを驚く私に向けた…-。