伝令からの報告を聞くため、私は国王様と共に謁見の間へとやって来た。
室内に流れる空気は重苦しく、慌ただしく出入りする重鎮たちの顔つきも険しい。
伝令「現在討伐部隊は別種の大型モンスターによる急襲を受けております。 そのため支援物資と増援の要請をお伝えに上がりました」
国王「そうか……最悪な報告ではなかったものの、安堵できるような事態でもないな」
(最悪な報告……)
国王様が口にした言葉の意味を理解して、私はぞくりと身体を震わせた。
不安な気持ちが膨れ上がり、胸が痛くなる。
(このままここで彼の帰還を待ってるだけなんて嫌……)
○○「国王様、私にも何かお手伝いをさせてください」
国王「姫……それはならん。前線は危険な場所だ」
○○「わかっています。でも……」
国王「……カリバーンを案じてくれているのだな」
○○「はい……」
国王「……」
国王様は、難しい顔つきでしばらく考え込んでいたけれど…
国王「それでは姫には、救護担当の部隊に同行していただこう」
○○「……ありがとうございます!」
国王「カリバーンの言うた通りじゃな」
○○「え……?」
国王「いや……普通の姫とは少し違っていると」
○○「カリバーンが……」
深く息を吐き、国王様が兵士の方達に声を上げる。
国王「姫の護衛を手厚くせよ。傷ひとつ負わせるな!」
兵士「はっ!」
国王「姫……息子のことを、よろしく頼みます。 息子は強いが、それ故、追いつめられると脆い部分もある……どうか……」
○○「……! はい、必ず……!」
同行の許可を得た私は、部隊と共にすぐ城を発った…-。
…
……
半日かけて前線の基地に着いた私達は、まず救援物資の運び込みをすることになった。
兵士の方達に紛れ、手伝いをしていると……
カリバーン「○○……!?」
名前を呼ばれ、慌てて顔を上げる。
カリバーンの姿を見て安堵したのも束の間、彼は眉根を寄せて険しい表情を浮かべていた。
(カリバーン? なんだか様子が……)
○○「カリバーン、どこか怪我でも……」
カリバーン「こちらへ」
○○「……!」
唐突に手首を掴まれ、有無を言わせない力で連れて行かれる。
戸惑いながらも、もつれる足で後を追うと、人目を離れた場所まで来た瞬間、岩壁に押し付けられた。
○○「痛っ……」
衝撃に声を漏らしてしまうけれど、カリバーンは厳しい視線を私に向けたままだった。
カリバーン「なぜこんな場所へ来たんですか。 俺は城で待っていてくれと言ったはずです」
怒りをたたえた声色に、体が竦んでしまう。
○○「ごめんなさい……」
カリバーン「ここがどれだけ危険な場所か、わからないわけではないでしょう」
○○「カリバーンのことが、心配で……」
カリバーン「……っ」
カリバーンは厳しい表情のまま、黙り込んでしまう。
カリバーン「……基地の中にいて、絶対に外へは出ないようにしてください」
カリバーンは掴んでいた手を離すと、背を向け去って行ってしまった。
(どうしよう……怒らせちゃった)
(私が、浅はかだったんだ……)
落ち込んだまま動けず、立ち尽くしていると……
看護師「姫様……すみません、声が聞こえてしまって……大丈夫ですか?」
ここまで同じ馬に乗せてくれた看護師の女性が、心配して歩み寄ってきてくれる。
○○「はい……私、余計なことしちゃったみたいですね……」
看護師「……戦況が悪いので、苛立ってしまわれているのかもしれません。 ですが、カリバーン様は姫様のことが心配で仕方ないのだと思います。どうか元気を出してください」
○○「ありがとうございます」
なんとか彼女に微笑み返し、二人で一緒に基地の中へと戻る。
けれど…-。
その後もカリバーンとは話す機会が持てないまま、時間だけが空しく過ぎていった…-。