鍛冶屋ギルドを訪れていた私達の耳に、重い鐘の音が聞こえてきた。
途端に周囲の人々がざわつき始め、緊張が走る。
カリバーン「モンスター襲来か……!?」
カリバーンが眉根を寄せ、城壁のある方角を見据える。
先ほどまでとは違い、表情は硬く引き締まり、低い声には緊迫感が滲んでいた。
○○「モンスターが……」
カリバーン「すみません。しばらく大型モンスターは出ないと、調査部隊から連絡が来ていたんですが……」
私を振り返ったカリバーンが、申し訳なさそうに目を伏せる。
カリバーン「危険な場所に貴女を呼び寄せてしまいましたね……」
○○「いえ、大丈夫です」
カリバーン「……とりあえず城へ戻りましょう」
カリバーンが、私の手を引き寄せる。
カリバーン「貴女のことは、何があっても必ずお守りします。安心してください」
私の手を握る彼の手に、力が強く込められる。
(熱い手……)
私とカリバーンは、彼の馬で城へと急いだ…-。
城に戻ると、慌ただしく部隊が編成されているところだった。
武装した兵士の方達の間に、重々しい空気が立ち込めている。
??「カリバーン、戻ったか」
指示を与えていた高貴な身なりの男性が、カリバーンの元へ歩み寄ってくる。
カリバーン「兄さん」
カリバーンの兄「せっかくのところすまないが……」
カリバーンのお兄さんは、私に気遣わしげな視線を投げかけてきた。
カリバーンはお兄さんに頷き返してから、私の方に向き直った。
カリバーン「○○、俺はモンスターの討伐に向かいます。 すぐに戻るので、この城で待っていてくれますか?」
○○「カリバーン……」
カリバーンは私の両肩に手をおくと、大丈夫というように頷いてみせた。
○○「……」
押し寄せる不安に何も言えないでいると、カリバーンが優しく私の頬を撫でてくれた。
カリバーン「そんな顔をしないで。一時でも別れ辛くなります。 それにモンスターの討伐には、慣れています。いつものことなので」
○○「いつものこと……」
(大丈夫……彼の言う通り、きっと今までもそうしてきたんだし……)
物々しい雰囲気が、私の不安をさらに煽る。
(わかってはいるけれど……)
○○「……慣れていたとしても、危険なことに変わりはありません。 だからどうか……気を付けてください」
そう言った時…-。
カリバーン「……」
カリバーンの瞳が、わずかに揺れた気がした。
○○「カリバーン?」
カリバーン「いえ……」
カリバーンは私の気持ちを落ち着かせるように、髪をそっと撫でてくれた。
カリバーン「わかりました、約束します。 必ず討伐を成功させ、無事戻ってみせます」
○○「はい……お気をつけて」
ふっともう一度優しく笑った後、カリバーンは颯爽と外套を翻した。
カリバーン「……行くぞ!」
祈るような気持ちで、部隊と共に討伐へ向かうカリバーンの背を見送った…-。