第3話 王子の素顔

国王様への謁見の後、私はカリバーンさんに滞在する部屋へと案内してもらっていた。

(王子様が自ら、案内してくれるなんて……)

(さっきも……町までわざわざ迎えに来てくれたし)

堂々と廊下を歩く彼の後ろで、私はすっかり恐縮してしまっていた。

すると、不意にカリバーンさんが立ち止まる。

カリバーン「……さすがに堅苦しいかな」

○○「え……?」

襟元を少し緩めながら振り返ったカリバーンさんが、苦笑いを浮かべて肩を竦める。

カリバーン「父王の手前、格式張った挨拶になってしまいましたね……。 俺の振る舞いが、○○様に気疲れをさせていませんか?」

○○「! 気疲れなんて、そんな……」

見透かされた気持ちになり、慌てて首を横に振ると…-。

カリバーンさんは、親しみやすい笑顔を見せてくれた。

カリバーン「堅物だと思われていないか、実は心配していたんですよ」

○○「とても王子様らしかったです」

カリバーン「それは喜んでいいのでしょうか?」

○○「はい。かっこいいなと思いました」

カリバーン「……そうですか。それじゃあ最後までそれを通せばよかったな」

今までの生真面目な表情を崩し、いたずらっぽく笑いながら目を細める。

(さっきまでのカリバーンさんもかっこよかったけれど……)

カリバーンさんの少し砕けた態度が、私の緊張をほぐしてくれる。

(こんな風に笑ってもらえて、嬉しいな)

カリバーン「○○姫、ここが貴女に滞在していただく部屋です。 気に入ってもらえるとよいのですが」

カリバーンさんは自ら扉を開き、私を室内へと招き入れてくれた。

要塞のように堅牢な造りをした城の雰囲気を和ませるためか、室内は暖かみのある調度品で統一されていた。

カリバーン「できるだけ○○姫が過ごしやすいよう整えさせました。 何か不自由があったらすぐに言ってください」

○○「ありがとうございます」

カリバーン「無骨な造りの城ですが、ゆっくり過ごしていただければと思います。 それから、もしよければ明日改めて、○○姫に町を案内させて欲しいのですが」

○○「すいません、お気遣いいただいて。カリバーンさんだって忙しいはずなのに……」

カリバーン「気を遣っているわけではないですよ。俺が○○姫を案内したいんです」

○○「……それでは、お願いします」

カリバーン「はい、任せて下さい。 ○○姫、他に何か気になっていることはありませんか?」

○○「できればその……姫と呼ばれるのは慣れていなくて」

カリバーン「え……」

一瞬、目を見開いたかと思うと、カリバーンさんが楽しげな笑い声をこぼす。

カリバーン「ははっ……やっぱり貴女は変わった方ですね」

クスクスと笑みをこぼしながら、カリバーンさんは優しい眼差しを私に向けた。

カリバーン「……では、○○とお呼びしても?」

○○「はい」

カリバーン「代わりに俺のことも、カリバーンと呼んでくれますか?」

○○「わかりました」

カリバーン「よかった。試しに呼んでみてください」

○○「じゃあ……カリバーン」

照れながら名前を呼ぶと……

カリバーン「何でしょう、○○?」

カリバーンは首を少し傾けながら、穏やかな声で返事を返してくれる。

あたたかい雰囲気に包まれながら、私達はお互いに微笑み合った…-。

 

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