国王様への謁見の後、私はカリバーンさんに滞在する部屋へと案内してもらっていた。
(王子様が自ら、案内してくれるなんて……)
(さっきも……町までわざわざ迎えに来てくれたし)
堂々と廊下を歩く彼の後ろで、私はすっかり恐縮してしまっていた。
すると、不意にカリバーンさんが立ち止まる。
カリバーン「……さすがに堅苦しいかな」
○○「え……?」
襟元を少し緩めながら振り返ったカリバーンさんが、苦笑いを浮かべて肩を竦める。
カリバーン「父王の手前、格式張った挨拶になってしまいましたね……。 俺の振る舞いが、○○様に気疲れをさせていませんか?」
○○「! 気疲れなんて、そんな……」
見透かされた気持ちになり、慌てて首を横に振ると…-。
カリバーンさんは、親しみやすい笑顔を見せてくれた。
カリバーン「堅物だと思われていないか、実は心配していたんですよ」
○○「とても王子様らしかったです」
カリバーン「それは喜んでいいのでしょうか?」
○○「はい。かっこいいなと思いました」
カリバーン「……そうですか。それじゃあ最後までそれを通せばよかったな」
今までの生真面目な表情を崩し、いたずらっぽく笑いながら目を細める。
(さっきまでのカリバーンさんもかっこよかったけれど……)
カリバーンさんの少し砕けた態度が、私の緊張をほぐしてくれる。
(こんな風に笑ってもらえて、嬉しいな)
カリバーン「○○姫、ここが貴女に滞在していただく部屋です。 気に入ってもらえるとよいのですが」
カリバーンさんは自ら扉を開き、私を室内へと招き入れてくれた。
要塞のように堅牢な造りをした城の雰囲気を和ませるためか、室内は暖かみのある調度品で統一されていた。
カリバーン「できるだけ○○姫が過ごしやすいよう整えさせました。 何か不自由があったらすぐに言ってください」
○○「ありがとうございます」
カリバーン「無骨な造りの城ですが、ゆっくり過ごしていただければと思います。 それから、もしよければ明日改めて、○○姫に町を案内させて欲しいのですが」
○○「すいません、お気遣いいただいて。カリバーンさんだって忙しいはずなのに……」
カリバーン「気を遣っているわけではないですよ。俺が○○姫を案内したいんです」
○○「……それでは、お願いします」
カリバーン「はい、任せて下さい。 ○○姫、他に何か気になっていることはありませんか?」
○○「できればその……姫と呼ばれるのは慣れていなくて」
カリバーン「え……」
一瞬、目を見開いたかと思うと、カリバーンさんが楽しげな笑い声をこぼす。
カリバーン「ははっ……やっぱり貴女は変わった方ですね」
クスクスと笑みをこぼしながら、カリバーンさんは優しい眼差しを私に向けた。
カリバーン「……では、○○とお呼びしても?」
○○「はい」
カリバーン「代わりに俺のことも、カリバーンと呼んでくれますか?」
○○「わかりました」
カリバーン「よかった。試しに呼んでみてください」
○○「じゃあ……カリバーン」
照れながら名前を呼ぶと……
カリバーン「何でしょう、○○?」
カリバーンは首を少し傾けながら、穏やかな声で返事を返してくれる。
あたたかい雰囲気に包まれながら、私達はお互いに微笑み合った…-。