アヴァロンの王子であるカリバーンさんは騎兵隊を引き連れ、私を城下町まで迎えに来てくれた。
しばらくして城門へ辿りつくと、カリバーンさんは先に馬を降りた。
カリバーン「さあ、姫」
乗るとき同様、私に向かい手を差し伸べてくれた。
カリバーン「怖くはありませんでしたか? 少し緊張されていたようですが」
隣に降り立った私のことを見つめ、気遣わしげな視線を向ける。
○○「町の人達に注目されているのが、なんだか恥ずかしくて」
カリバーン「そうでしたか……」
カリバーンさんは意外そうな顔をしてから、ふっと優しい笑みをこぼした。
カリバーン「貴女のような姫に会うのは初めてです」
頬を熱くしながら、カリバーンさんの馬に視線を向けた。
○○「……大きな馬ですね。それに真っ黒な瞳がとても綺麗」
カリバーン「○○姫に褒められて、こいつも喜んでいます」
漆黒の毛を撫でながら、カリバーンさんが優しいまなざしを馬に向ける。
カリバーン「そろそろ城の中へ入りましょう」
○○「はい」
カリバーンさんに続き、荘厳な造りの城門をくぐる。
謁見の間には国王をはじめ、宰相や重鎮達がずらりとそろっていた。
どの人も鍛え抜かれた体躯をしていて、その迫力に圧倒されるほどだった。
国王「このたびは、よく来てくれた。トロイメアの姫よ、息子カリバーンを救ってくれた礼を言う」
○○「いえ……お招きいただき、ありがとうございます」
国王「我が国には、危険なモンスターが多く存在する。 だが、この城や町の中は衛兵が守っているので、安心して過ごして欲しい」
カリバーン「ええ。今度は決して……ユメクイにも後れをとらぬつもりです」
実直な瞳をしたカリバーンさんが、私に頷きかける。
吸い込まれそうなぐらい凛々しく誠実な彼の眼差しに、思わず見惚れてしまっていると……
カリバーン「○○姫、俺の顔に何か?」
○○「いえ……! なんでもないです」
カリバーン「そうですか? では部屋へご案内致しますので、こちらへ」
流麗な所作で、カリバーンさんが私を促す。
(本当に、振る舞いの一つ一つがとても凛々しくて、なんだか緊張する……)
カリバーンさんに続いて謁見の間を後にするとき、侍従の方達の囁くような会話が聞こえてきた。
侍女「お似合いのお二人ですね」
侍従「ああ。カリバーン様もそろそろ……」
(え……)
カリバーンさんの厳かな振る舞いに見惚れていたせいか、そんな会話を聞いてしまったせいか……
妙に彼を意識してしまい、また胸の鼓動が速くなっていた…-。