不気味に静まり返る、収穫祭の夜…ー。
アルタイル「○○、どこだ!?」
ウィル王子が考案したイメージビデオの撮影のため、街の人々と協力し、○○を驚かした俺は……
脅えて走り去ってしまった○○の姿を探し求め、人けのない街中を全力で駆け抜ける。
(……っ。俺は一体、何をやっているんだ)
(まさか、あんなにも怖がらせてしまうなんて……)
走り去ってしまう直前の、彼女の顔が頭を過ぎった瞬間……
胸の中が、罪悪感でいっぱいになった。
(俺はあんな顔をさせたかったんじゃない)
自責の念に駆られながら、彼女の姿を追い求める。
すると、その時……
(……! あれは……)
視界の端に、○○の姿が映った。
しかし……
○○「……っ!」
彼女はこちらの方を見るなり、その場から逃げ出そうとする。
アルタイル「○○、俺だ! さっきはすまなかった!!」
俺は全速力で走って彼女の腕を掴むと、恐怖に震える体を包み込み、あれは全て作り物の演出だったと告げる。
すると……
○○「そ、そんな……」
アルタイル「○○……っ!?」
彼女の目に、大粒の涙が浮かび……
俺の胸は罪悪感で押し潰されそうになった。
アルタイル「すまなかった…。 真面目に取り組みすぎたせいか、思いの外、○○を怖がらせてしまった……」
(謝って済む問題ではないかもしれないが)
(頼む。泣かないでくれ……)
俺は謝罪の言葉を述べながら、少しでも早く涙が止まるようにと彼女の頭を撫でた。
○○「アルタイルさん……」
アルタイル「お前を驚かせたかったのに、俺は楽しませることと怖がらせることの差がわかっていなかったようだ。 なかなか難しいものだな……」
涙に濡れる○○の目元に唇を落とし、涙を拭う。
しかし、彼女の瞳には再び涙が浮かんでしまい……
アルタイル「……困ったな…○○を泣かせたかったわけじゃないんだが……。 本当に……悪かった……」
俺はもう何度目かもわからない謝罪の言葉を述べた後、彼女の体を柔らかく包み込んだ。
○○「あ……」
アルタイル「どうか泣き止んではくれないか? 俺はお前のその可愛らしい笑顔を見たかっただけなんだ……」
○○「アルタイルさん……」
これ以上怖がらせてしまわないよう、出来る限り優しく言葉を紡ぐ。
すると……
(あ……)
彼女は指先で涙を拭った後、俺を真っ直ぐに見つめ、微笑んでくれた。
(○○……よかった、本当に……)
俺は、ほっと胸を撫で下ろした後、○○に触れるだけの口づけを落とす。
すると、彼女は俺を拒絶することも、怖がることもなく……
ただただ静かに、俺を受け入れてくれた。
そうして、少しの間の後…ー。
アルタイル「もう、怖くないか……?」
唇を離した俺は、彼女の瞳を見つめて問いかける。
○○「はい、大丈夫です。だけど……」
アルタイル「……? だけど、何だ?」
(もしかして、俺は他にも失態を……?)
一抹の不安を感じながら、返事を待つ。
しかし……
○○「さっきの演出……確かにすごく怖かったです。だけど、何よりも……。 アルタイルさんが、本当に亡霊に取り憑かれてしまったのかと思って。 優しいアルタイルさんの笑顔を思い出して、なんだか悲しくなって……」
アルタイル「……っ!」
悲しげにつぶやく彼女を、俺は思い切り抱きしめる。
そして……
アルタイル「大丈夫だ。俺はここにいる。 これから何があろうと、お前の傍を離れない。だから…ー」
そこまで言いかけた時、俺の背中にそっと腕が回され、わずかな間の後、ぎゅっと力が込められる。
(○○……)
互いの温もりを感じながら、静かに抱き合う。
そんな俺達を、収穫祭の幻想的な街並みだけが、静かに見守っていたのだった…ー。
おわり。