多くの人で賑わう、収穫祭の夜…-。
(こんなに楽しい時間は久しぶりだな)
○○と共にパレードに参加した俺は、公務ということも忘れ、この時間を思い切り楽しんでいる。
すると、その時……
(あ……)
藍色の空に大きな花火が上がり、二発、三発と続くたびに、人々が歓声を上げる。
(皆、本当に楽しそうだ)
(それも全て、お前のおかげだな)
俺は周りの人々の笑顔を眺めた後、最愛の彼女へと視線を向ける。
そして……
○○「え……アルタイルさん?」
美しい花火を見つめる○○を、後ろからそっと包み込み、こちらへと振り向く彼女に、愛おしさを込めながら微笑みかけた。
アルタイル「○○……やはりお前が一緒でよかった。 きっと俺一人では、こんなに多くの人を笑顔にはできなかっただろう。 この胸がこんなにも弾んでいるのは、隣にお前がいてくれるからだな」
○○「そんな……」
○○はそう言った後、うつむきがちに目を伏せてしまう。
その頬は、ほんのり赤く色づいていて……
(……本当にかわいいな)
アルタイル「○○、もっと俺に、お前の顔を見せてくれないか? 伝えただろう? 俺は○○の喜ぶ顔が見られれば、満足なんだ」
○○「はい……」
そう言って顔を上げた○○の頬を、そっと撫でると……
彼女は、俺を信頼しきったかのように身を預けてくれた。
(○○……)
触れた場所から伝わる温もりを噛みしめていると、俺の胸の中も、じんわりと温かくなる。
そして……
アルタイル「せっかくの収穫祭だ、俺達も最後まで楽しもうじゃないか」
○○「はい……アルタイルさん」
俺は名残惜しい気持ちを覚えながらも、○○を抱きしめる腕を解き……
彼女の柔らかな手を握って、歩き始める。
そうして、夜を彩るパレードが終盤に差し掛かったころ……
アルタイル「○○」
○○「……?」
街並みを眺めていた彼女が、俺を見上げる。
アルタイル「パレードが終わっても、ずっとこうして一緒にいられるといいな」
○○「……! アルタイルさん……」
俺が微笑みかけると、彼女は大きく目を見開いた。
○○「私も、同じことを思っていました」
アルタイル「え……?」
○○の笑顔に、鼓動が跳ね上がる。
アルタイル「……そうか。ありがとう」
俺は溢れる想いを込めながら、○○の手を強く握った。
そんな俺の手を、彼女も微笑みながら握り返してくれる。
すると、その時…-。
男の子「お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ~!」
女の子「するぞ~!」
俺達の前に、二人組の小さなお化けが現れた。
アルタイル「それは困るな……ほら、このお菓子で見逃してくれるか?」
俺と○○がお菓子を差し出すと、子ども達は笑顔で受け取り、走り去っていく。
○○「二人共、とっても可愛かったですね」
アルタイル「ああ。それに、心から楽しんでくれているみたいだ。 来年の収穫祭も、こんなふうに皆が笑顔になれるものだといいな」
○○「アルタイルさん……はい、そうですね」
そう言うと、○○は俺の手をぎゅっと握る。
そして……
○○「私、アルタイルさんのそういうところ……大好きです」
アルタイル「……!」
頬を染めながらはにかむ彼女に。言葉にできないほどの愛おしさが込み上げる。
そうして、少しの間の後…-。
アルタイル「○○……」
再び大きな花火が上がり、人々が夜空を見上げた瞬間……
俺は彼女に、そっと口づけを落としたのだった…-。
おわり。