映画のセットのような本格的な飾りつけがなされた街角…-。
夕暮れに照らされ始めたその中で、男の子は泣きじゃくる。
アルタイル「困ったな……確かに大人には楽しいかもしれないが、この街のセットや仮装は、子供には怖すぎるのか……」
○○「ねえ、泣かないで? ほら、キャンディーをあげるから」
街中で出店を回った時に買ったカボチャの形のキャンディーを差し出す。
迷子だった子ども「あれ? 何これ、カボチャのランタンみたいでかわいいね!」
子どもの涙が一瞬、キャンディーに気を取られて止まる。
○○「それにほら、この街には怖いお化けだけじゃないよ? さっき、このお兄さんのことは怖くないって言ってたでしょ?」
アルタイル「俺が……か?」
迷子だった子ども「あ……っ」
子どもの真っ直ぐな瞳で見つめられて、アルタイルさんが目を瞬かせる。
アルタイル「……」
しばらく子どもを見つめていたアルタイルさんが、柔らかな笑みを作る。
アルタイル「ああ、そうだぞ? 君を驚かせた友達も、格好は怖くても中身は大切な友達だろう?」
迷子だった子ども「……」
アルタイル「それでもまだ怖いなら、君が収穫祭を好きになれるよう、俺も協力しよう!」
迷子だった子ども「……本当に?」
アルタイル「ああ、俺は嘘をついたことは一度もないんだ、信じて欲しい」
力強いアルタイルさんの言葉に、さっきまで泣いていた子どもの顔に笑顔が戻る。
迷子だった子ども「約束……だよ?」
アルタイル「ああ」
迷子だった子ども「えへへ、やっぱりおにいちゃんは、怖くない! ありがとう、怪物のおにいちゃん!」
こぼれそうな笑顔を浮かべ、大きく手を振りながら子どもが去っていく。
○○「よかったですね、笑顔になってくれて。 でも、どうするつもりなんですか? さっきの約束……」
アルタイル「もう一度、城に行く。ウィル王子に提案するんだ。 怖がりな子どもでも楽しめる形の収穫祭を。 協力してくれるか? ○○」
○○「……はい、当然です」
アルタイル「ありがとう!」
○○「……っ!」
その途端、私の体は優しい人造人間に抱きしめられた。
すぐ近くで見る彼はとても嬉しそうな顔をしていて……
(本当にアルタイルさんって、皆に幸せになって欲しいんだ)
(アルタイルさんのこういうところ、私、大好き……)
彼の持つ優しさに、私の心はあたたかなもので満たされるのであった…-。
その後、私達はもう一度、ウィル王子に会いに行った。
『子どもでも楽しめるような収穫祭を』という私達の話を聞いたウィル王子は、頭を捻りながら、子どもが参加するパレードのセット、演出の修正案をその場で出してくれた…-。
城から戻ってくると、アルタイルさんの周りにすぐさま人々が集まってきた。
街の人1「聞いたよ、またセットを直すんだろ?」
街の人2「あんたらの提案じゃみんなで協力して間に合わせるしかないからな」
○○「皆さん……!」
アルタイル「すまない、なら頼んだぞ」
こうして祭りが本格的に始まるまでのわずかな時間に、またもやセットの大改造がなされることになったのだった…-。