ホラー映画が現実となったような、少し不気味な収穫祭の街の中…-。
アルタイル「ウィル王子には特別怖い仮装でと、言われたんだが……」
○○「え!? そうだったんですか?」
私はアルタイルさんと街の人々の様子を見た。
(街のセットは確かに怖いけど)
(アルタイルさんは、完全に街の人達に慕われてるし……)
○○「うーん……アルタイルさんは、優しいから、確かに怖い雰囲気は無いかもしれません」
アルタイル「! やはり俺のこの格好は怖くないのだろうか? 頼まれたからにはしっかりと役目をこなしたいのだが……」
アルタイルさんは夕焼けに染まった街から視線を上げた。
その先には、ロトリアの城が見える。
アルタイル「ここは、城にいるウィル王子に実際に見てもらうべきか……」
私達はその後、ロトリアの城を訪れることにした。
すると城の前で、数人の人々が集まって何かを話していた。
お化け姿の男「全然怖くないって言われちゃったよ、さすがプロの目は違うなぁ……」
悪魔姿の女「さすが著名なホラー映画監督なだけあるわよね、よし、もう一度衣装を直しましょう!」
漏れ聞こえてきた会話に、私とアルタイルさんは顔を見合わせる。
アルタイル「ひとまず俺が直接行って、ウィル王子に聞いてこよう」
○○「そうですね、私はここで待っています」
難しい顔をしたアルタイルさんの背中が、城の奥に消える。
(大丈夫かな……?)
…
……
しばらくすると、アルタイルさんは渋い顔をしてこちらに戻ってきた。
○○「それで、結果は……?」
アルタイル「想像通りだ。人造人間らしさはよく出ているとのことだが……あくまでも今回のテーマは『身の毛もよだつホラーナイト』ということらしい」
○○「そうなんですか……」
悩み始めたアルタイルさんの姿を、今一度まじまじと見る。
アルタイル「どうしたんだ?」
○○「ええと、その……私はその姿も素敵だなって思うので、少しもったいない気がして」
(さっきも、アルタイルを囲んでた街の皆は笑顔だったし)
○○「優しいモンスターの仮装、すごくアルタイルさんらしいし……」
私がぽつりと本音をつぶやくと……
アルタイル「…………」
彼はふと私を見て、傷跡のメイクのある顔で柔らかく笑った。
アルタイル「お前がいてくれてよかった」
○○「え?」
そっと彼に抱き寄せられて、いつもと違う顔が近づく。
アルタイル「俺は……できることなら、皆が楽しめる収穫祭がいいと思う。 プロデュースするウィル王子も、街の人々や子ども達も……。 それに、お前もだ。俺はお前にも心から楽しんでもらいたい」
○○「アルタイルさん……」
縫い痕の描かれた片手が私の頬の上をすべる。
アルタイル「もう少しだけ、付き合ってもらえるか?」
○○「はい、こうなったらアルタイルさんが納得いくまで」
(私は、こうして二人でいるだけでも十分楽しいし)
淡い気持ちは胸の中に押し込んで、私達はロトリアの城を出たのだった…-。