第5話 もっと怖く?

ホラー映画が現実となったような、少し不気味な収穫祭の街の中…-。

アルタイル「ウィル王子には特別怖い仮装でと、言われたんだが……」

○○「え!? そうだったんですか?」

私はアルタイルさんと街の人々の様子を見た。

(街のセットは確かに怖いけど)

(アルタイルさんは、完全に街の人達に慕われてるし……)

○○「うーん……アルタイルさんは、優しいから、確かに怖い雰囲気は無いかもしれません」

アルタイル「! やはり俺のこの格好は怖くないのだろうか? 頼まれたからにはしっかりと役目をこなしたいのだが……」

アルタイルさんは夕焼けに染まった街から視線を上げた。

その先には、ロトリアの城が見える。

アルタイル「ここは、城にいるウィル王子に実際に見てもらうべきか……」

私達はその後、ロトリアの城を訪れることにした。

すると城の前で、数人の人々が集まって何かを話していた。

お化け姿の男「全然怖くないって言われちゃったよ、さすがプロの目は違うなぁ……」

悪魔姿の女「さすが著名なホラー映画監督なだけあるわよね、よし、もう一度衣装を直しましょう!」

漏れ聞こえてきた会話に、私とアルタイルさんは顔を見合わせる。

アルタイル「ひとまず俺が直接行って、ウィル王子に聞いてこよう」

○○「そうですね、私はここで待っています」

難しい顔をしたアルタイルさんの背中が、城の奥に消える。

(大丈夫かな……?)

……

しばらくすると、アルタイルさんは渋い顔をしてこちらに戻ってきた。

○○「それで、結果は……?」

アルタイル「想像通りだ。人造人間らしさはよく出ているとのことだが……あくまでも今回のテーマは『身の毛もよだつホラーナイト』ということらしい」

○○「そうなんですか……」

悩み始めたアルタイルさんの姿を、今一度まじまじと見る。

アルタイル「どうしたんだ?」

○○「ええと、その……私はその姿も素敵だなって思うので、少しもったいない気がして」

(さっきも、アルタイルを囲んでた街の皆は笑顔だったし)

○○「優しいモンスターの仮装、すごくアルタイルさんらしいし……」

私がぽつりと本音をつぶやくと……

アルタイル「…………」

彼はふと私を見て、傷跡のメイクのある顔で柔らかく笑った。

アルタイル「お前がいてくれてよかった」

○○「え?」

そっと彼に抱き寄せられて、いつもと違う顔が近づく。

アルタイル「俺は……できることなら、皆が楽しめる収穫祭がいいと思う。 プロデュースするウィル王子も、街の人々や子ども達も……。 それに、お前もだ。俺はお前にも心から楽しんでもらいたい」

○○「アルタイルさん……」

縫い痕の描かれた片手が私の頬の上をすべる。

アルタイル「もう少しだけ、付き合ってもらえるか?」

○○「はい、こうなったらアルタイルさんが納得いくまで」

(私は、こうして二人でいるだけでも十分楽しいし)

淡い気持ちは胸の中に押し込んで、私達はロトリアの城を出たのだった…-。

 

<<第4話||太陽覚醒へ>>||月覚醒へ>>