私達は街の人々に交ざり、収穫祭本番に向けての準備を手伝い続け…-。
やがて、ウィル王子の要望通りに作り替えられたセットや装飾が完成した。
アルタイル「これでなんとか間に合ったな」
(でも、ちょっとだけセットが本格的すぎて怖いような……)
(なんだか、ホラー映画の世界に入り込んだみたい)
街の人1「本当にありがとう! これなら最高の祭りになりそうだ!」
街の人々もいつの間にかモンスターの仮装に身を包み、さながらその場は墓地に集う亡霊の集会のようになっている。
アルタイル「俺は必要だと思うことをしただけに過ぎない。 一年に一度だけの祭りならば、皆が楽しめる形にしたいだろう」
するとそこに、さきほどのアイス屋の店主がやってきた。
出店の店主「ちょっと出店通りで客同士が揉めてしまってね。なにやら便利屋さんがいるって聞いたから相談を……って、あんた達だったんですか!?」
○○「え……?」
アルタイル「便利屋……?」
私達は顔を見合わせる。
(いつの間にそんなことに?)
すると店主の後に続いて、街の警備兵までやってきた。
警備兵「困った時はここの御仁を頼れって言われたんだが……」
小さい男の子「ボク迷子になっちゃったの。でもお化けが苦手で、街のみんなの仮装が怖くて……」
どこで噂を聞きつけたのか、祭りの本番を前に困った人々が続々と駆けつける。
アルタイル「これは……仕方ないな、○○」
アルタイルさんは腰に両手を当てて、私の方に視線を向ける。
○○「こうなったら……全部解決しちゃいましょうか?」
アルタイル「ああ、○○ならそう言ってくれると思っていた。 忙しくなりそうだな、だが頼りにされたからにはその期待に応えなければ。 今日限りの便利屋、開業だな」
(人造人間の便利屋さんか……収穫祭らしいかも)
こうして私は彼の助手を務める形で、街に起きた様々な問題を、一緒に解決することになったのだった。
…
……
すべての問題を解決する頃には、太陽が西に傾き始めていた。
出店の店主「いやぁ、ほんとに助かりましたよ!」
迷子だった子ども「怪物のおにーちゃん、一緒にお友だち探してくれてありがとう!」
各々モンスターの仮装に身を包んだ人々が、人造人間の姿をしたアルタイルさんに感謝を告げる。
(なんだか不思議な光景。モンスターの頼れる便利屋さん、か)
そんなことを思っていると…-。
迷子だった子ども「えへへ、お化けは怖いけど、おにーちゃんは全然怖くないね!」
アルタイル「怖くないだって!?」
アルタイルさんの表情が、急激に変わった。
○○「はい、怖くないです。それが何か?」
アルタイル「参ったな……ウィル王子には特別怖い仮装でと、言われたんだが……」
○○「え!? そうだったんですか?」
(怖いどころか、完全に心の優しいモンスターって感じだけど、大丈夫かな?)
夜が近づき、辺りの空気がひんやりとし始める。
そんな中、私達は苦笑いしながら、ホラー映画のセットのような街に目をやった…-。