第3話 二人で作るランタン

人だかりに、何事かと近づいてみれば…-。

街の人1「さすがウィル王子だな! 本番ギリギリまでよりよい収穫祭にしようってんだから」

街の人2「けどこの指示書通りにセットを直すのは……間に合うか?」

集まった人達は、困り顔で何か相談しているようだった。

(何かあったのかな……?)

すると…-。

アルタイル「よければ詳しく話を聞かせてもらえないだろうか?」

街の人1「あんたは?」

私達は軽く自己紹介をした後、彼らから事情を聞かせてもらった。

どうやら前日のリハーサルで、パレードを行う広場のセットが一部壊れてしまったらしい。

街の人1「他にも、もう少しホラー要素を上げられないかって話で……」

街の人2「せっかくだから俺達もウィル王子の要望に従っていい祭りにしたいんだが、何分人手がなぁ……」

アルタイル「なるほど。人手があればいいわけだな。 ○○」

アルタイルさんは少し迷うように私に視線を投げかけた。

(手伝ってあげたいのかな?)

○○「わかってます、一緒に手伝いましょう」

アルタイル「ありがとう、恩に着る。人々が困っているのは見逃せなくてな」

彼はほっとしたように微笑むと、街の人々の方に向き直った。

こうして私達は街の人々に交ざり、夜の本番に向けて、準備を手伝うことになった。

アルタイル「時間があまりない、分業で乗り切ろう。 セットの修復は男手で、こまかな電飾や飾りの変更は女性や子ども達の手で」

(アルタイルさん、すごい……あんなに的確に)

持ち前の指導力か、彼が先行してセットの修復が手早く進んで行く。

街の人2「こっちのカボチャのランタンは? もっと顔を怖くしろって言われたんだが」

街の人3「この藁は、人形か何かにするのか? 上手くまとまらないぞ?」

アルタイル「なら俺が直接やろう。農作物の取り扱いならお手の物だ。 ○○、一緒に手伝ってはもらえないだろうか?」

○○「はい、もちろんです」

アルタイル「心強いな」

アルタイルさんは大きく頷いて、街の人が引いてきた荷台から巨大なカボチャを降ろした。

○○「ずいぶん大きいんですね! 小さな子どもなら入れてしまいそう」

アルタイル「ん? ○○は、カボチャの中に入ってみたいのか?」

○○「い、いえ……さすがにそれは」

二人して笑い合って、ランタンの制作に入る。

アルタイル「中は俺がくり抜くから、○○は顔の部分をくり抜いて、ランタンを作ってくれ」

言葉の通り、くり抜いたカボチャを渡される。

(えっと、顔ってどんな顔を?)

大きなオレンジ色のカボチャに、果物ナイフを突き立てて…-。

アルタイル「気を付けてくれ、危ないぞ!」

○○「え!?」

彼の大きな手が、私の手を包み込んだ。

アルタイル「この手のカボチャは皮が硬いからな、慎重にやらないと指を怪我してしまう」

○○「あ、はい……」

彼が私の背後から手を伸ばし、私の手をナイフごと握るようにして、顔に見えるように当たりをつけて、切れ込みをいれていく。

(アルタイルさん、すごく器用なんだ)

(それに、このカボチャの顔、なんだか笑ってるみたいでかわいい)

アルタイル「○○もやってみてくれ、力加減に気をつけて」

○○「は、はい……」

耳元で囁くように言われて、胸が小さく跳ねる。

(落ち着かない……)

なんとかうまい具合にアルタイルさんの入れてくれた当たり通りに顔をくり抜く。

アルタイル「……上手いもんだ」

顔を上げると、私を見下ろす彼がふわりと笑っていた。

(褒めてもらえるって嬉しいな)

こうして本番に向けた準備は、順調に進んでいくのだった…-。

 

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