第2話 収穫祭デート

収穫祭本番に向けて、華やぐロトリアの街…-。

その広場で、私は人造人間の仮装をしたアルタイルさんと再会した。

アルタイル「ところで○○、もし先約がないのなら、俺と一緒に街を回ってはくれないだろうか?」

○○「はい、もちろんです」

答えれば、すっと逞しい腕が差し出される。

アルタイル「良かった。こういう祭りは好きなんだ。お前と一緒なら、より楽しめそうだ」

爽やかな笑顔にドキドキしながら、私はアルタイルさんの腕に手を添えた。

(普段と違うドキドキは……仮装のせい、かな?)

今回の収穫祭をプロデュースするウィル王子は、有名なホラー映画監督だと聞いている。

(ホラーって言っても……)

怖い人造人間に扮した、アルタイルさんの表情はとても優しい。

なんだかおかしくて、ふっと笑みをこぼしてしまう。

アルタイル「? どうした? 何か変か?」

○○「いえ、すみません」

弾む気持ちのまま、私達は大通りの方へと向かった。

……

出店の店主「そこのおふたりさん、おばけカボチャのアイスはどうだい?」

収穫祭の出店を見ていると、アイス屋の店主に声をかけられた。

ショーケースの中にはカボチャ型のクッキーを飾ったアイスや、真っ赤なシャーベットが並んでいる。

アルタイル「随分といい色だな、それは何というカボチャなんだ?」

出店の店主「ああ、ロトリア特産のピュアオレンジってカボチャなんですよ。 味も見た目もちょうどいいって、収穫祭に合わせて昔から栽培してもらってるんです」

アルタイル「ほう……珍しい品種だな。今度、国の者に視察に行かせてみよう」

真面目な顔をして、彼は胸元から取り出したメモに何やら書き込む。

○○「アルタイルさん、これじゃまるでお仕事に来たみたいですよ」

浮かれた雰囲気の収穫祭なのに、どこまでも真剣に取り組む彼の様子がなんだか可笑しくて、また小さく笑いがこぼれてしまう。

アルタイル「ん……? ……! そうだった、今は○○といるのに、マナー違反だったな。 俺の国は農業が主要産業だから、つい気になってしまったんだ」

○○「いいえ、偉いなって思います」

アルタイル「そうだろうか……? しかし、面と向かって言われるとさすがに恥ずかしいな……」

彼の目元が優しげに細められる。

アルタイル「次の店に行ってみるか?」

○○「そうですね」

アルタイル「だがその前に……店主、彼女にそのアイスをひとつもらえるか?」

出店の店主「もちろんですよ!」

店主から受け取ったアイスを、アルタイルさんが私に手渡す。

○○「ありがとうございます」

アルタイル「礼はいらない。俺はお前の喜ぶ顔を見られれば、満足だからな」

心から嬉しそうに言って、彼はアイスを頬張る私を幸せそうに見る。

(なんだか照れるな……)

彼の笑顔がまぶしくて、頬が熱くなった……。

こうして雑貨やお菓子の出店を見ているうちに…-

○○「あれは何でしょうか?」

ある一角に人々が集まっているのを見かけて、立ち止まった。

アルタイル「祭りを楽しんでいる、というわけではないようだが……」

人々の空気に焦りのようなものを感じて、私は近づいてみたのだった…-。

 

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