収穫祭本番に向けて、華やぐロトリアの街…-。
その広場で、私は人造人間の仮装をしたアルタイルさんと再会した。
アルタイル「ところで○○、もし先約がないのなら、俺と一緒に街を回ってはくれないだろうか?」
○○「はい、もちろんです」
答えれば、すっと逞しい腕が差し出される。
アルタイル「良かった。こういう祭りは好きなんだ。お前と一緒なら、より楽しめそうだ」
爽やかな笑顔にドキドキしながら、私はアルタイルさんの腕に手を添えた。
(普段と違うドキドキは……仮装のせい、かな?)
今回の収穫祭をプロデュースするウィル王子は、有名なホラー映画監督だと聞いている。
(ホラーって言っても……)
怖い人造人間に扮した、アルタイルさんの表情はとても優しい。
なんだかおかしくて、ふっと笑みをこぼしてしまう。
アルタイル「? どうした? 何か変か?」
○○「いえ、すみません」
弾む気持ちのまま、私達は大通りの方へと向かった。
…
……
出店の店主「そこのおふたりさん、おばけカボチャのアイスはどうだい?」
収穫祭の出店を見ていると、アイス屋の店主に声をかけられた。
ショーケースの中にはカボチャ型のクッキーを飾ったアイスや、真っ赤なシャーベットが並んでいる。
アルタイル「随分といい色だな、それは何というカボチャなんだ?」
出店の店主「ああ、ロトリア特産のピュアオレンジってカボチャなんですよ。 味も見た目もちょうどいいって、収穫祭に合わせて昔から栽培してもらってるんです」
アルタイル「ほう……珍しい品種だな。今度、国の者に視察に行かせてみよう」
真面目な顔をして、彼は胸元から取り出したメモに何やら書き込む。
○○「アルタイルさん、これじゃまるでお仕事に来たみたいですよ」
浮かれた雰囲気の収穫祭なのに、どこまでも真剣に取り組む彼の様子がなんだか可笑しくて、また小さく笑いがこぼれてしまう。
アルタイル「ん……? ……! そうだった、今は○○といるのに、マナー違反だったな。 俺の国は農業が主要産業だから、つい気になってしまったんだ」
○○「いいえ、偉いなって思います」
アルタイル「そうだろうか……? しかし、面と向かって言われるとさすがに恥ずかしいな……」
彼の目元が優しげに細められる。
アルタイル「次の店に行ってみるか?」
○○「そうですね」
アルタイル「だがその前に……店主、彼女にそのアイスをひとつもらえるか?」
出店の店主「もちろんですよ!」
店主から受け取ったアイスを、アルタイルさんが私に手渡す。
○○「ありがとうございます」
アルタイル「礼はいらない。俺はお前の喜ぶ顔を見られれば、満足だからな」
心から嬉しそうに言って、彼はアイスを頬張る私を幸せそうに見る。
(なんだか照れるな……)
彼の笑顔がまぶしくて、頬が熱くなった……。
こうして雑貨やお菓子の出店を見ているうちに…-
○○「あれは何でしょうか?」
ある一角に人々が集まっているのを見かけて、立ち止まった。
アルタイル「祭りを楽しんでいる、というわけではないようだが……」
人々の空気に焦りのようなものを感じて、私は近づいてみたのだった…-。