幻惑の国・ロトリア 宙の月…-。
収穫祭を迎えたロトリアの街は、多くの人で賑わっていた。
まだ日は高いけれど、カボチャや蜘蛛の巣の飾りに、ランタンやロウソクなどが街のいたるところに置いてある。
(今日の夕方からが本番みたいだけど、見た感じ元の世界のハロウィンみたい)
そんなことを思いながら、周りの様子に見入っていると…-。
アルタイル「○○か?」
○○「え、アルタイルさん……?」
広場で偶然すれ違ったのは、星の国・ガラッシアの東国の王子、アルタイルさんだった。
○○「その恰好は……」
再会した彼は、仮装に身を包んでいるようだった。
整った顔面に走る縫合痕のメイクに、黒を基調としたロングコートを羽織っている。
(なんだか、前に会った時とイメージが全然違う)
アルタイル「ああ……これか?」
纏っている仮装に視線を落とすと、アルタイルさんが不安げに眉尻を下げた。
アルタイル「収穫祭に招待された王子は必ず仮装をしてくるように、ウィル王子から伝えられている。 俺は人造人間の仮装を指定されたんだが、おかしいだろうか? これでも三日ほど真面目に考えたんだが……」
(……三日も!?)
(アルタイルさんって、相変わらず本当に真面目だな……)
アルタイル「……○○?」
つい微笑ましく思っていると、彼が私の顔を覗き込んできた。
一気に距離が近づいて、胸がとくんと高鳴る……
○○「あ、すみません。つい見入ってしまって……素敵だと思いますよ」
アルタイル「そうか……お前がそう思ってくれるなら安心だ」
精悍な顔の表情が、ふっと和らぐ。
仮装のせいかいつもと違う雰囲気を持つ彼が、特別な収穫祭の時間を、私に予感させた…-。