いきなり姿を消してしまったカノトさんを探しに来た森で、私は足を滑らせてしまった…-。
〇〇「痛っ……」
痛む腰を撫でながら上を見上げると、さっきまで自分がいた場所が見える。
(崖下に落ちたんだ……)
どうにかして上に戻れないかと、足をかけてみるけれど、ぬるりと滑ってまた転んでしまう。
(どうしよう……)
途方に暮れて、急激に寂しさに襲われる。
(カノトさん、大丈夫かな……)
―――――
カノト『〇〇と出会えて嬉しい』
カノト『きっと〇〇がいれば、来年、僕にしかできない祭り、できそう』
―――――
(会いたい……顔を見て安心したい)
心細さと心配とで、胸がつぶれてしまいそうになる。
それに…-。
〇〇「寒い……」
夜になって冷たさを増す森の空気が、心細さをあおるように私を包んだ。
(このままじゃ、凍えてしまう……)
膝を抱えて座り込んで震えていた、その時…-。
カノト「〇〇っ」
〇〇「えっ!」
顔を上げると、崖下へとカノトさんが降りて来るのが見えた。
〇〇「カノトさん……!」
すぐ私の前に膝をつくと、すっかり冷え切った体を温めるように抱きしめてくれる。
カノト「ごめん……」
小さな声で謝ってくれたけど、カノトさんの表情はどこかむっとしているようで……
〇〇「カノトさん……?」
カノト「……」
(どうしたの……?)
会えて嬉しいのに、彼の難しい表情が私の心をざわめかせた…-。