太陽SS 夕陽が沈むまで

〇〇を、森で危ない目にあわせちゃってから何日か経って……

僕は、もう一度森に行こうと〇〇を誘った…―。

(やっぱり、素敵な場所だ)

森に着いたら、葉っぱ達が夕陽の茜色を受けてきらきらと輝いていた。

(綺麗な森だから……〇〇にも、好きになってほしい)

(素敵な場所、怖い思いのままは……駄目)

数日前に崖下まで滑り落ちた〇〇が、この森を嫌いにならないように……

(……でも、女の子はちょっと通りにくい、かも)

通り道を見ると、木の根が地面を這い、土が盛り上がって段差が出来ていた。

(僕が、〇〇、守らなきゃ)

通りやすい道を見つけて、〇〇の手を引っ張る。

カノト「こっち側、通りやすい。木の根がないから」

〇〇「ありがとうございます」

無事に道を通れたことを確認して前を向くと、大きな石が目についた。

カノト「ちょっと待ってて」

通るには邪魔になりそうだから、〇〇に待っていてもらう。

(これで、よし)

大きな石を取り除いて帰ってくると……

(あれ? 〇〇、寂しそうな顔……)

(不安に、させた?)

カノト「お待たせ! 大丈夫、行こう」

〇〇「あ…―」

〇〇に笑ってほしくて、もう一度ぎゅっと手を握り直す。

(もう、悲しませたり不安にさせたりしない)

彼女は僕が守る、そう決心した時…-。

〇〇「頼もしいですね」

カノト「……っ!」

後ろから聞こえた、彼女の言葉に思わず振り向いた。

〇〇「……カノトさん?」

(僕、頼もしい?)

(……嬉しい)

彼女を見つめると、心臓が痛くなってくる。

(ドキドキで、熱い……)

頬が熱くて、胸に何かこみ上げる感じがして、彼女から目が離せない。

(なんでだろう?)

不思議に思いながら、吸い込まれるように〇〇に顔を近づけると……

スチル(ネタバレ注意)

私「……っ!」

考えるよりも先に、彼女の唇にキスをしていた。

(〇〇に、触れたい……)

〇〇「ん……っ」

(一緒だ……〇〇も、熱いかも)

僕の指先が触れた彼女の頬は、僕と同じように熱を持っている。

カノト「ここもやっぱり柔らかい……」

(女の人、不思議……)

(でも、女の人だからじゃなくて、〇〇だから)

(僕は、きみを守りたい)

カノト「きみと会って、知った。女の人は、男が守る。好きな人なら、なおさら……」

(そっか……)

自然と自分の口から出た、好きな人という言葉……

このドキドキの正体がはっきり、わかった。

(〇〇、好き)

〇〇「ん……」

ずっとキスしていたかったけれど、この気持ちを伝えたくて顔を離す。

カノト「ようやくわかった。このドキドキは、好きのドキドキ……僕、きみが好き。大好きだから……。 これからは、僕がきみを守る」

〇〇「ありがとう……カノトさん」

(お礼を言いたいのは、僕の方)

たくさん伝えたいことがあるのに、初めて知った好きと言う気持ちが、溢れだして止まらない。

カノト「〇〇、好きだよ。好き……」

〇〇「カノトさん……」

(〇〇も、同じ気持ちだといいな……)

カノト「〇〇は?」

〇〇「えっ……?」

けれど彼女は顔を真っ赤にして僕を見上げた後、顔を伏せてしまう。

(その顔もかわいいけど……聞かせてほしい)

カノト「〇〇、僕のこと……好き?」

恥ずかしそうにうつむく彼女の頬に手を添えて、目を合わせる。

カノト「お願い、聞きたい」

じっと見つめていたら、彼女は小さく頷いた。

〇〇「私も……カノトさんが好きです」

カノト「っ……!」

(さっきよりも、もっともっと、嬉しい)

夕陽を浴びる背中が、とても熱い。

カノト「〇〇、大好き」

夕陽が沈むまで、〇〇とキスをしていたいと、僕はそう思った…-。

 

おわり。

 

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