カノトさんと、森へ向かう途中…-。
カノト「〇〇……これ、何? 丸くてぽかぽか」
〇〇「これは……ベビーカステラ? かな?」
カノト「べびーかすてら? ……あ、あれは?」
〇〇「あれは…-」
街が珍しいのか、カノトさんは興味がひかれるところを見つけるたびに私に質問をする。
そんなカノトさんが可愛くて、つい寄り道ばかりしてしまい…-。
…
……
結局、森に行く前に夜の帳が落ちて、街のあちこちに提灯の明かりがほのかに灯り始めた。
カノト「それじゃあ、〇〇はお菓子が好き?」
歩きながら、私はカノトさんの質問に答え続けていた。
(私のことに興味あるのかな? それとも単に初めて会った女の子だから?)
〇〇「そうですね。食べると幸せな気持ちになれます」
カノト「幸せ……?」
〇〇「はい……胸が温かくなって、幸せな気持ちでいっぱいになります」
カノト「それ……知ってる」
〇〇「え?」
カノト「僕もなる。今もそう」
カノトさんの長いまつ毛に縁取られた瞳が、宝石箱を開けたようにきらめき始めた。
カノト「きみを見る、ドキドキする。なんで?」
(それって……)
カノト「どうしてかな?」
カノトさんは無邪気に首を傾げた。
ふわりと柔らかそうな毛先が揺れる。
〇〇「……それは……」
どう答えていいものかわからず、私はうつむいてしまって……
〇〇「……」
カノト「〇〇?」
〇〇「ごめんなさい、何て言ったらいいか……」
カノト「困ってる?」
〇〇「……」
何と言ったらいいのかわからず、なかなか顔が上げられない。
(どうしよ………親愛の情の表れって説明をすればいいかな……)
ようやく考えをまとめて顔を上げると、さっきまで目の前にいたカノトさんが忽然と消えていた。
〇〇「え…-」
すぐに辺りを見渡すけれど、どこにも姿はない。
〇〇「カノトさん!!」
大声で叫びながら、しばらく辺りを歩き回って探すけれど、やっぱり見つからなかった。
(どうしよう……あまり道がわかってないのに……今頃、きっと不安がって)
そう思うと、いてもたってもいられなくなる。
(もしかしたら、先に一人で森に行ったのかな……)
心当たりが他になく、私は急いで森へと向かった…-。
やってきた夜の森は、昼とは違う顔を持っていた。
ひんやりとした空気が足元から這い上がり、遠くで得体の知れない動物の鳴き声が響いている。
(怖い……でも、きっとカノトさんはもっと怖がってる)
そう考えて、竦んだ足を前へ進めた。
〇〇「カノトさーんっ! カノトさーんっ!」
名前を呼ぶ声は、深い森の闇に震えながら消えていく。
暗い森の中、頼れるのはかすかに灯る提灯の明かりだけ…-。
(どうしよう……)
さらに胸に不安が広がり始めた、その時…-。
〇〇「あっ!」
落ち葉の積もった石に足を滑らせ、私は崖から滑り落ちてしまった…-。
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