カノトさんと森へと向かう中、街の喧騒が大きくなり始めていた。
見れば、あちこちで人が忙しそうに走り回っている。
(どうしたんだろう?)
〇〇「何かあるんでしょうか?」
カノト「うん。あるよ!」
私の問いかけに、カノトさんは嬉しそうに答えてくれる。
カノト「年越しの大きな祭。年越しの儀。12の王族が交代で務めてる。その準備」
(大きなお祭りが年末にあるんだ)
カノト「去年から今年、未のヒノト兄。今年から来年、申のカノエ兄。その次、僕」
〇〇「もうすぐカノトさんの番なんですね」
カノト「そう。城にいること多い。けど、儀式の練習、勉強、してる」
カノトさんの瞳に、今までに見たこともないような真剣さが浮かんでいる。
カノト「酉の王族だから。自分の代、どんなことしようか考えるの、楽しい」
そう語るカノトさんの顔は、誇りに満ちているように思えた。
(少し大人っぽい……何だかドキドキして)
〇〇「まだ先ですけど……カノトさんが担当するお祭り、ぜひ観に行きたいです」
私の言葉に、カノトさんが少し照れた小さな声で……
カノト「ありがとう。 僕、城の外を知らない、でも〇〇、たくさん知ってる。 〇〇と出会えて嬉しい。 きっと〇〇がいれば、来年、僕にしかできない祭り、できそう」
(私がいれば?)
突然の言葉に瞬きを繰り返しながら……
〇〇「力になれれば嬉しいと思います」
カノト「なる。今、なってる」
自信たっぷりに言われて、私は頬が熱くなるのを感じた。
カノト「今の僕、まだ足りない。もっともっと、知る。知りたい」
たどたどしい言葉から、熱い心が伝わってくる。
(こんなに可愛らしい男の子なのに、中身は立派な王子様なんだ)
カノト「がんばる」
澄んだ瞳を真っ直ぐに向けられ、目がそらせない。
〇〇「……はい」
決意を受け取るように、私は笑みを返す。
すると、カノトさんもとびきり柔らかい笑みを浮かべた。
(綺麗……)
その笑顔を見ると、胸のときめきはますます増していくのだった…-。
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