こよみの国・九曜…-。
奏の月を目前にした頃、まだらにしか日が差しこまない深い森の中……
柔らかな草の上で、目覚めたばかりのカノトさんがゆっくりと体を起こす。
カノト「ん……?」
寝ぼけた眼差しはしっとりと濡れているようで、世界中のきらめきを集めたように照り映えている。
美しく整った顔立ちは瞬きを忘れるほど優美で、私はついうっとりと眺めてしまった。
(綺麗……)
木漏れ日を弾いてきらきらと光る彼の美しい瞳が私を捉える。
〇〇「……っ」
それだけで心臓を鷲掴みされたようになって、びくっと肩が揺れた。
カノト「……母さん?」
(え……?)
覚束ない足取りで立ち上がると、カノトさんはこちらに向かって頼りなげに歩み寄ってきた。
カノト「あ……っ」
少し大きな石に躓いて、カノトさんがよろめく。
(危ない……!)
反射的に体が動いて、カノトさんをなんとか支えた。
美しい容姿とは裏腹に、しっかりとした体つきが着物越しにも伝わってくる。
カノト「……っ」
そのとき、偶然にカノトさんの手が私の胸元に触れた。
〇〇「……!!」
けれどカノトさんの手は私の胸に触れたまま、動く気配がない。
(ど、ど、どうして?)
混乱のあまり、抵抗するのも忘れてしまって……
カノト「……聞いた通り。女の人、柔らかい……」
つぶやく言葉には好奇心だけが滲んでいて、邪さは一切感じられなかった…―。
第2話>>