動き始めたローラーコースターは、素晴らしい物語を目の前に繰り広げながら、早速、急斜面をゆっくりと登り始めた。
(緊張してきた……)
絶叫アトラクション特有の高ぶりが、胸中に広がる。
ジェット「こっからが本番だな」
ジェットさんが嬉々としてそう言った時だった。
がくん、と音を立てて、ジェットコースターが停止する。
ジェット「あれ……?」
〇〇「っ……」
(どういうこと……?)
最前列に座る私の耳に、後ろの席に乗ったお客さん達のざわめきが届き始める。
乗客1「何が起こったの?」
乗客2「これもアトラクションの演出?」
乗客3「故障なんじゃないか?」
しばらくたっても、コースターが動き出す気配はない。
ジェット「試運転で、ちゃんと確認したはずなのに……」
さっきまでの楽しげな表情が一転、ジェットさんは悔しげに表情を歪めていて……
〇〇「あの…―」
乗客1「やだ……怖い!」
乗客2「こんな角度で止まって、どうすりゃいいんだ!」
混乱し始めたのか、お客さん達のざわめきが大きくなっていく。
(どうしよう……!)
不安を覚え、隣にいるジェットさんを思わず見てしまうと……
ジェット「……」
彼の表情は、何かを決意したように凛々しく引きしめられていたのだった…-。