パーク内に、招待客の楽しそうな笑い声が響いている…-。
アスレチックを終えたジェットさんと私は、またローラーコースターのあるエリアに戻ってきた。
〇〇「途中、なんだか怖そうなレストランがありましたね」
ジェット「あー、ウィルのレストランのことだな。 あれ、結構怖いから、注意な!」
(確かウィルさんって、すごく怖いホラー映画を作る映画監督さん……)
ぶるりと体を震わせる私を見て、ジェットさんがふっと笑った。
ジェット「怖いの苦手か?」
〇〇「得意ではありません……」
ジェット「気をつけろよ、ウィルに会ったらカモにされるぜ?」
〇〇「え……」
ジェット「あいつ、けっこう行きすぎなとこあるからなー。ま、俺がついてたら大丈夫だ」
何気なく言われた言葉が、私の胸を甘くくすぐる。
ジェット「ま、ホラーレストランはなしとして……この辺はワゴンでパイとかナゲットとか売ってるから。 見て回って何か食うか」
〇〇「はい!」
楽しみで、思わず声を大きくしてしまうと……
ジェット「ははっ、いい返事だな! 腹減ったのか?」
〇〇「……」
(恥ずかしい……)
と、その時…-。
??「ジェット様! 間もなくプレオープンです!!」
弾む声が、ローラーコースターの入口から飛んできた。
見上げれば、スタッフさん達が作業帽を振りながらこちらを嬉しそうに見下ろしている。
ジェット「そうか!!」
瞬間、ジェットさんの瞳も輝いた。
〇〇「ジェットさん、おめでとうございます」
ジェット「おう! ありがとな」
ジェットさんの今日一番の笑みが、私に向けられた。
ジェット「行くぞ! 〇〇」
〇〇「はいっ!」
ジェットさんの手が、急かすように私に背にあてられる。
ジェット「やべ、マジでドキドキしてきた!」
はやる気持ちを抑えられない様子の彼のことを、少しかわいいと思ってしまった…-。
…
……
ローラーコースターの乗り場まで到着すると……
ジェット「……よし」
ジェットさんは、アトラクションの最終確認を始めた。
その間も、プレオープンで入ったお客さん達が続々と整列を始めている。
(皆、この映画のことを話してる)
入念に確認をするジェットさんを、ちらりと見やる。
(この人が体を張ってるって……皆は知ってるのかな)
そんなことを思っていると、確認を終えたジェットさんが戻ってきた。
ジェット「ばっちりだ。早速、初めての運転開始だな!」
高らかな声が響き、いよいよローラーコースターに乗り込む。
ジェットさんも、私の隣に座って……
ジェット「列車は暴走するからな。覚悟しとけよ?」
少し悪戯めいた瞳でそう言われ、ドキドキと胸が高鳴り出す。
(いよいよだ……)
緊張感が高まる中、ローラーコースターはゆっくりと動き始めるのだった…-。