静かな空間に、優しい時間が流れている…ー。
ロルフ「ん……」
ゆっくりとまぶたを開けると、○○ちゃんの顔がすぐ近くにあった。
ロルフ「!」
(ボ、ボク……!?)
そこでようやく、ボクは仮装を決めた安心感にまどろんでしまったことを思い出す。
隣では、〇〇ちゃんが穏やかな寝息を立てて眠っていた。
(……〇〇ちゃん、疲れてちゃったよね)
(ずっと、ボクに付き合ってくれて……)
そっと〇〇ちゃんの頬に触れると、彼女のまぶたがかすかに震えた。
ロルフ「……!」
でも、〇〇ちゃんは、また規則正しい寝息を立て始める。
(よかった。起こしちゃだめ……)
ボクは、〇〇ちゃんを見上げた。
(長いまつ毛……)
幸せそうに眠る○○ちゃんは、まるで……
(仮装なんてしなくても、〇〇ちゃんは天使みたいです……)
そんなことを思いながら、ボクは今日のことを振り返ってみる。
(それなのに、ボクは……)
一人で収穫祭の仮装すら決められない自分が、なんだかとても恥ずかしく思えた。
(ボクは……)
ー----
○○『ロルフ君の衣装探し、手伝うよ』
○○『そうだね。今度は二人のイメージにあう、仮装用のキャラクターを探そうか。 たとえば物語の登場人物とか……』
ー----
一生懸命、ボクの仮装のことを考えてくれた○○ちゃん。
ロルフ「……ありがとう」
小さな声でお礼を言って、じっと○○ちゃんの顔を見つめていると……
○○「ん……」
不意に、〇〇ちゃんの頭がボクの肩に乗せられた。
ロルフ「……!」
彼女の髪が、ボクの頬を優しくくすぐった。
(……あったかいな……)
今度は〇〇ちゃんを見下ろす形となったボクは、心の中で語りかける。
(〇〇ちゃん……気付いていますか?)
起こさないように気をつけながら、彼女の頭をそっと撫でる。
(ボク……背が少し伸びたんです)
○○ちゃんと出会ってから、ボクの背は、少しずつ……前よりも早く伸びている。
(とても不思議です)
けれどボクには、その理由がなんとなくわかる気がした。
(アナタを早く……守れるようになりたい)
○○ちゃんと出会ってから、ボクの胸に生まれた気持ち……
あったかくて、あまずっぱい、この気持ち……
(今はまだ、○○ちゃんは、 ボクのこと子どもだって思ってるかもしれないけど)
(きっと、いつか○○ちゃんを、こうして見下ろせるときがくると思います)
(だから……)
○○ちゃんの髪に頬を擦り寄せると、優しい香りがふわりと漂った。
その香りが、またボクを心地良い眠りへと誘う。
(だから……そのときは)
(ボクと……)
その先の言葉は、まどろみの中へとけていく。
今こうして、〇〇ちゃんとごく自然に寄り添えることが、とても幸せであり、そして少しもどかしいと、ボクはそう感じていた…ー。
おわり。