武器の国・アヴァロン…-。
私とプリンセスが、闘技場の檻から逃げ出した巨大モンスターと対峙していた、その時…-。
ジーク「危ない、プリンセスっ!!」
〇〇「っ!?」
モンスターの払った瓦礫が、プリンセスに迫る。
顔から血の気が引いて、私は無我夢中で駆け出していた。
(……っ!)
プリンセスの前に飛び出した私の体に、瓦礫が容赦なく降り注ぐ。
そうして、少しの間の後…-。
〇〇「え……? あっ……!」
降り注ぐ瓦礫が止んだ頃、声がした方へ振り返ると……
そこには、呆然としながら私を見つめるプリンセスの姿があった。
ジーク「〇〇、ご無事でしたか!?」
(どこか、お怪我は……)
私が声をかけると、プリンセスははっと我に返ったような素振りを見せ、その表情がみるみる内に曇ってゆく。
〇〇「ごめんなさいっ、私……ジークさんに怪我を……」
(え……?)
プリンセスの一言で、私はようやく額ににじむ生温かいものに気づいた。
すると、彼女はなおも申し訳なさそうな表情を浮かべながら、私の額へと手を伸ばす。
(プリンセス……)
私は彼女の手を取り、そっと唇を押しつける。
ジーク「構いません。あなたが無事でいてくれたことが私にとって最上の幸福です」
(本当に、あなたがご無事でよかった……)
〇〇「ジークさん……」
ジーク「それよりも…-」
彼女に嘘偽りない気持ちを伝えた後、立ち上がってモンスターをにらみつける。
モンスターの周りでは、近衛兵団が一丸となって、捕縛用の鎖を投げかけていた。
(……未だ、予断を許さない状況のようですね)
私は手にした剣を握りしめ、なおも暴れるモンスターを見据える。
そして……
ジーク「プリンセス、もうしばらくだけお待ちください」
(たとえこの身が朽ち果てようとも……あなたは、必ず私がお守りいたします)
私はプリンセスに力強く語りかけた後、地面を蹴り、捕縛の最前線へと向かった…-。
…
……
(終わったか……)
私が最前線へと躍り出てから、数分後…-。
人々を恐怖に陥れた巨大モンスターは、鎖で地面に縛りつけられていた。
〇〇「大丈夫ですか?」
ジーク「プリンセス……」
私は、駆け寄ってきたプリンセスを安心させるように微笑む。
すると、彼女はポケットから取り出したハンカチで、私の頬についた砂埃を拭おうとした。
けれども……
ジーク「どうか心配なさらないでください、あなたのハンカチが汚れてしまいます」
〇〇「でも……」
プリンセスはハンカチを手にしたまま、気遣わしげな表情を浮かべる。
(……そんな顔をしないでください)
(私はあなたのためなら、どれほどまでに傷つき汚れようとも構わないのです)
(なぜなら……)
ジーク「先ほども申し上げたでしょう? 私にとってはあなたの無事が……。 いえ、その可愛らしい顔に浮かぶ微笑みこそが、私の守りたいものなのですから……」
(だから、どうか……)
(どうか私などのために、そのような顔をしないでください)
〇〇「ジークさん……」
想いを込めながら、ハンカチを持った彼女の手を力強く包み込む。
すると、次の瞬間……
私の想いが伝わったのか、彼女はどこか安心したように微笑んでくれたのだった…-。
おわり。