突然の地響きに、周囲が混乱に包まれる中…-。
私はジークさんの腕にしっかりと守られていた。
〇〇「一体、何が起こったのでしょうか?」
私の声に、ジークさんが耳元で低い声を出す。
ジーク「おそらくですが、闘技場で捕えられていた巨大モンスターが脱走したのではないでしょうか?」
〇〇「えっ!?」
驚きに目を見開いた瞬間、彼の人差し指が私の唇の前に立てられる。
ジーク「どうかお静かに、不用意に観覧客に不安を抱かせてはなりません」
〇〇「……」
私は彼の冷静な判断に、黙ったまま頷いた。
ジーク「もし観覧客に被害が出ては大変なことになります」
〇〇「何か……私達にもできることはないのでしょうか?」
ジーク「私も、闘技場の方へ様子を見に行って参ります」
ジークさんは、腰に携えたレイピアの柄に手を掛ける。
〇〇「私も行かせてください」
ジーク「プリンセス!? 何を……」
アメジスト色の瞳が、驚きに見開かれる。
〇〇「ジークさん一人を、危険な場所に行かせるわけにはいきません」
ジーク「いけません! プリンセスに万が一のことがあったら……」
〇〇「でも……お願いします」
(ジークさんのことが、心配で……)
私はジークさんの険しい顔をひたと見つめ続ける。
ジーク「……わかりました。 ですがもし危険を感じたら、あなたはすぐに逃げてください」
〇〇「はい……!」
ジーク「それと、絶対に私の傍から離れないでください。いいですね、約束ですよ、プリンセス」
〇〇「はい、必ず守ります」
私の言葉を聞いて、ジークさんがゆっくりと首を縦に振る。
ジーク「では行きましょう、プリンセス」
彼はレイピアを抜いて、私を背に守るようにしながら闘技場へ駆け出す。
鼓動がうるさいほど胸の中で鳴り響く中……
私も彼の後をついて、走り出すのだった…-。