トロイメアの姫として、アヴァロンで開催される闘技大会に招待された私は…-。
その場で宝石の国・メジスティアのジークさんと再会した。
競技会の開始が近づいているのか、人々のざわめきが大きくなっていく。
〇〇「でも、巨大なモンスターと戦うなんて、危険ではないのですか?」
ジーク「確かに、危険でないとは言い切れません。 ですがアヴァロンをはじめ、この辺りの国の武器は非常に素晴らしい性能を持っているのです」
〇〇「武器、ですか」
ジーク「はい、このたびの競技会は、それらの武器をお披露目する意味合いもあるのですよ」
どこか誇らしげな様子で、ジークさんは語る。
〇〇「もしかして、ジークさんはその武器を見にここへ?」
ジーク「……!」
ジークさんの凛々しい表情が、一瞬だけ崩れた。
ジーク「……実はその通りなんです。子どもっぽいと、プリンセスは思われるかもしれませんが。 私は……このアヴァロンに伝わる伝説の剣と盾を、ぜひ見たいと思っているのです」
〇〇「伝説の……剣と盾?」
ジーク「はい、アヴァロンの二人の王子がそれぞれ受け継いでいる剣と盾は、聖剣、聖盾として、世界に名を馳せている素晴らしい武具なのです」
いつもは大人びた雰囲気をまとっている彼が、今は夢を追う少年のように、瞳を輝かせている……
(ジークさんにこんな一面があったなんて、知らなかった)
彼の意外な一面を知り、少し嬉しくなる。
〇〇「それはぜひ見てみたいですね」
ジーク「プリンセスもですか?」
意外そうに、彼が瞳を瞬かせる。
〇〇「おかしいでしょうか?」
ジーク「い、いいえ、そんなことは!! あなたと同じ思いを共有できることを、むしろとても喜ばしく思います!」
柔らかな日差しのような笑みに、胸がかすかに高鳴る。
その時、ジークさんが席から立ち上がった。
ジーク「ちょうどこの後に、アヴァロン城で公開される予定なのです。 よろしければ私とご一緒してはいただけませんか?」
〇〇「あっ……」
彼の大きな両手が私の手を包む。
アメジスト色の深い瞳に、真っ直ぐに見つめられて……
ジーク「もしご興味があれば……どうでしょうか、プリンセス?」
〇〇「はい、ぜひ」
頬が熱くなるのを感じながら、私は静かに頷いた。
ジーク「良かった……! あ…―」
ぱっと、私の手を包んでいた彼の手が離れた。
ジーク「も、申し訳ありませんプリンセス! 失礼を……」
〇〇「い、いえ」
慌てふためくジークさんに、笑いかける。
私の手には、彼の手の熱がしっかりと残っていたのだった…-。