第4話 賞品は誰のもの?

エッグレースまで、残り数日となったある日…-。

レース場の準備はすでに整い、会場では練習をする人々の姿が見られるようになっていた。

(皆、楽しみにしてるんだな)

(でも、賞品が私のキスっていうのはやっぱり……)

(もっと皆が喜ぶようなものがあると思うんだけどな)

そんなことを考えていると…-。

ゴーシュ「……」

ゴーシュくんが、じっと私を見ていることに気がついた。

目が合うと、なんだか難しい顔をして近寄ってくる。

○○「ゴーシュくん……?」

ゴーシュ「……そんなに、迷惑だった?」

○○「え?」

ゴーシュ「あの賞品のこと。あれからあんた、なんか……静かになったよね」

(ゴーシュくん……気づいてたんだ)

賞品を思いついた時の自信満々な表情とは一変、今の彼はとても不安そうだった。

○○「……キスが賞品でいいのかなって」

ゴーシュ「やっぱり……嫌なんだ。おれにキスするの」

○○「そういうわけじゃないよ……!」

悲しげにつぶやくゴーシュくんに、思わずそう答える。

すると……

ゴーシュ「ふーん……」

○○「え? ……あっ!」

しまったと思った時にはもう遅く、ゴーシュくんは意地悪な笑みを浮かべている。

けれどそれも束の間、すぐに真剣な表情へと変わり……

ゴーシュ「賞品は……」

○○「……? ゴーシュくん?」

ゴーシュ「しょ、賞品はおれがもらうって決まってるんだ……!」

ゴーシュくんが、今にも裏返りそうな声で叫ぶ。

ゴーシュ「おれが、言い出したんだから、おれが優勝するに決まってる。 エッグレースなら、得意だし……!」

○○「えっ? そうなの?」

ゴーシュ「う、うん。おれはなんだって得意だからね! ……初めてだけど」

○○「……!」

強がりながらも本当のことを言うゴーシュくんがかわいらしく、少し気持ちが楽になった私は……

○○「ゴーシュくんのこと、信じてるね」

ゴーシュ「……! うん、任せて!」

ゴーシュくんは、強い眼差しを向けて頷いた。

ゴーシュ「でもよく考えたら、言葉で安心しろって言うだけじゃ無責任かもね。 だから、見てて。今から安心させてあげる」

そう言って、スプーンに卵を乗せて意気揚々とコースを駆け出すゴーシュくんだったものの……

ゴーシュ「わぁっ……!」

○○「あっ……」

スプーンから転がり落ちた卵が、地面に落ちて割れてしまう。

ゴーシュ「な、何この卵! どうしておれの言うことを聞かないんだよ……! くそっ、もう一度だ!」

ゴーシュくんがパチンと指を鳴らすと、新しい卵がふわりと浮いた。

けれどその時、私達の様子を見守っていた子ども達がやってきて……

女の子1「ゴーシュさま、苦手なの?」

男の子1「じゃあ賞品は僕がもらえるかも」

男の子2「俺だってすごいぞ! さっきは、ここからゴールまであっという間だったんだから!」

ゴーシュ「う、うるさい! 賞品はおれのものだ!」

ムキになるゴーシュくんに、子ども達が笑い声を上げる。

(大丈夫かな……)

ゴーシュくんの様子に、私は少し不安を覚えてしまったのだった…-。

 

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