虹の国・オズ ウィンキー領 陽の月…-。
(ゴーシュくんに会うの、久しぶりだな)
賑わう街では、子ども達が楽しげに走り回っている。
その光景を和やかな気持ちで眺めていると…-。
??「よっ、○○」
○○「っ……!」
パチンと指を鳴らすような音が聞こえた次の瞬間、足元から不自然な風が舞い上がる。
私は、慌ててスカートを押さえつけるものの……
ゴーシュ「……なんだ、また白? 今度はもっとすごいの期待してるって言ったのに。 まあ、でも、これはこれで…-」
○○「ゴーシュくん……!」
ゴーシュくんは、初めて会った時のようにませた笑顔でニヤニヤと笑っている。
(もう……)
虹の国・オズは、『オズの魔法使い』と称されるオズワルド王子と、彼によって任命された複数の王子達が、それぞれの領を治めていて……
『西の魔法使い』と呼ばれるゴーシュくんが治めるこのウィンキー領には多くの魔法使いが暮らしている。
(ゴーシュくん、初めて会った時も魔法で私のスカートを……)
チェックと称してスカートをめくられた時のことを思い返し、頬がさらに熱を帯びてしまう。
そんな私の顔を、ゴーシュくんが覗き込み……
ゴーシュ「色っぽいやつじゃないのは残念だったけど……まあ、そのかわいい反応に免じて許してあげるよ」
○○「っ……」
(ゴーシュくんってば、相変わらず……)
(だけど、やっぱり憎めないんだよね)
ゴーシュ「それよりさ、今度の『感謝祭』のことなんだけど……」
ゴーシュくんの言う感謝祭とは、オズの国全体で行われる祭りのことで……
私は、ゴーシュくんと一緒に回る約束をしていた。
ゴーシュ「おれ、オズワルドに面倒なこと頼まれてるんだよね」
ゴーシュくんが、肩をすくめて短くため息を吐く。
○○「面倒なことって?」
ゴーシュ「感謝祭のために、エッグレースを開催しろってさ」
○○「エッグレース……?」
あまり耳慣れない言葉に首を傾げていると、ゴーシュくんは、特徴的な猫目を少し意地悪に歪めた。
ゴーシュ「知らないの? 卵をスプーンにのせて、落として割らないように競争するんだよ」
○○「そうなんだ。それをゴーシュくんが……」
得意げにエッグレースの説明してくれるゴーシュくんに頷きながらも、かわいらしいその表情に、私は心の中でそっと笑みをこぼしてしまうのだった…-。