のどかな波の音が、私達の沈黙をいっそう際立たせる。
ビッキーさんが大きなため息を吐き、私に笑いかけた。
ビッキー「今度こそ、愛想つかされたかな。 やっぱり、駄目だったか。今まで僕が楽しいばかりで、ケロタは我慢してたんだな」
(やっぱり……?)
ビッキー「それでも離れられないケロタは、可哀想だね」
(どうして、そんなふうに言うの?)
脳裏に昨日感じた小さな違和感が蘇った。
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〇〇『いえ……ビッキーさんが、なんだかさっきまでと違う人みたいだから』
ビッキー『そう?』
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(ケロタといる時は頼りなくて……)
(一人でいる時は、しっかりしてて……)
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ビッキー『……君は、いなくなってしまう人だから』
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(もしかして、ビッキーさんは……)
(わざと……?)
(わざとドジをして、ケロタが離れていかないことを確認したかった?)
(でも、ケロタは……)
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ケロタ『オマエ、ワシに感謝しろよ。ワシがいないと何もできない奴め!』
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ぶっきらぼうな言葉と似合わない、ケロタの優しい瞳を思い出す。
ビッキーさんは、いつまでも水面を見つめていた…-。