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ロルフ『……助けてください』
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尋常でない様子のロルフ君とひとまず部屋へ入り、ソファーに腰掛ける。
(話を聞くのは、ロルフ君が落ち着いてからにしよう)
ソファーに並んで座った私が、ハンカチを差し出すと……
ロルフ「……ごめんなさい、○○ちゃん」
ロルフ君は大粒の涙を瞳に溜めながら、私を遠慮がちに見上げる。
(か、可愛い……)
ドキドキしながらも、そっとロルフ君の頬にハンカチを当てた。
ロルフ「ありがとうございます……」
○○「少し落ち着いた?」
ロルフ「はい……」
○○「何があったか、話せそう?」
私の問いに、ロルフ君は小さく頷いた。
ロルフ「ボク……収穫祭の衣装が決まらなくて……」
ロルフ君が、小さな声でぽつりぽつりと話し始める。
ロルフ「お洋服はいつも、お母さまに選んでもらっているから……。 でも今回は自分で選ぶって……お父さまと約束しちゃったんです……。 少しは自分のこと、自分で決めなきゃいけないって言われて……」
○○「そうだったんだね」
ロルフ「何を着たらいいか、ちっとも浮かばないのに……。 もうすぐ収穫祭になっちゃう……」
またロルフ君の声が震え出したので、私は慌てて彼をなぐさめた。
○○「大丈夫、私がお手伝いするよ」
ロルフ「え……」
○○「ロルフ君の衣装探し、手伝うよ」
ロルフ「○○ちゃん……」
ロルフ君は涙を手の甲で拭きつつ、上目遣いで私を見上げた。
ロルフ「ほんとに手伝ってくれますか……?」
○○「うん、だから安心して」
手で拭って頬が赤くなってしまわないように、私は再びロルフ君の涙にハンカチを当てた。
ロルフ「ボク、どうしたらいいんでしょう……」
○○「難しく考えないで、ロルフ君が好きな衣装を着たらどうかな?」
ロルフ「好きな……」
ロルフ君が、人差し指を顎にあてながら天井を仰ぐ。
ロルフ「……よく、わからないです……」
○○「それじゃあ、ロルフ君がなりたいものに仮装してみるのはどうかな」
ロルフ「なりたいもの……」
ロルフ君は今度は、両手で頬を抑えながら考え込んで……
ロルフ「どうしよう……何になりたいかも、わかりません……」
(うーん……それなら)
○○「なりたい人はいる?」
ロルフ「えっと、それは……お父さまみたいに強い人か……。 お母さまみたいに優しい人になりたいです」
少し赤くなったロルフ君の頬が緩む。
(ご両親のこと、尊敬してるんだ)
○○「そしたら二人に会いに行ってみようか。何かヒントがもらえるかも」
ロルフ「……はい……そうしてみます。 ありがとうございます、○○ちゃん……!」
ほっとしたように肩の力を抜くと、ロルフ君は再会して初めての微笑みを私に見せてくれた…-。