美しく晴れた翌日…―。
(すごく幸せそう……)
湖のほとりで行われた結婚式に参列していた私達の目の前で、いよいよ歌が始まろうとしていた。
ケロタ「よし、始まるぞ! ビッキー、心の準備はいいか!?」
ビッキー「ケロタ、静かに」
ケロタ「来い! 至福のメロディー! 呪いとさよならだ!」
いよいよ歌が始まると、この上なく美しい響きが空に吸い込まれていく。
(なんて綺麗な歌……!)
やがて歌が終わり、村人達がいっせいに花吹雪を散らす。
ビッキー「○○、行こう」
ビッキーさんに手を引かれ、私達は少し離れた場所へと移った。
ケロタ「どうだ、どうだ!?」
○○「どうですか? 何か感じますか……?」
ビッキー「ケロタ、何か感じる?」
ケロタ「いや、オマエは?」
ビッキー「いや……何も感じないよ」
ケロタ「まだわかんないぞ。よし、離れてみよう」
そうして、二人は反対方向に向かって歩き出す。
けれど……
ケロタ「わわわわわー-!!」
しばらく行くと、ケロタはビッキーさんの肩に戻ってきてしまった。
(駄目だった……“至福のメロディー”じゃなかったんだ……)
ケロタ「またか……」
ビッキー「……ケロタ、また探そう」
うなだれてしまったケロタを、ビッキーさんが励まそうとする。
ケロタ「……いつまで」
ビッキー「……ケロタ?」
ケロタ「いつまでこうなんだよ!」
(ケロタ……!)
叫びにも似たその声に、波の音が重なる。
ケロタ「ワシはもう、呪いはうんざりだ!! いつまでオマエとべったりしてなきゃならないんだよ!!」
ビッキー「……!」
ケロタはビッキーさんの肩から飛び降りると、すぐ傍の湖にもぐってしまった。
(ビッキーさん……)
ビッキーさんは、湖面の水紋を見つめ、ぎゅっと拳を握る。
ー----
ビッキー『今はいつでもケロタが傍にいてくれるし。 ……ケロタは優しいから。 僕が頼りないから、面倒見てくれてるんだよ』
ー----
(ビッキーさん……ケロタ……)
○○「ビッキーさん……」
しばらくの沈黙の後、ビッキーさんがこちらを振り返る。
ビッキー「……変なところ見せちゃって、ごめんね」
ビッキーさんの瞳は、怖いくらいに静かに微笑んでいる。
握りしめられた彼の拳が、微かに震えていた…―。