第6話 笑顔の奥に

美しく晴れた翌日…―。

(すごく幸せそう……)

湖のほとりで行われた結婚式に参列していた私達の目の前で、いよいよ歌が始まろうとしていた。

ケロタ「よし、始まるぞ! ビッキー、心の準備はいいか!?」

ビッキー「ケロタ、静かに」

ケロタ「来い! 至福のメロディー! 呪いとさよならだ!」

いよいよ歌が始まると、この上なく美しい響きが空に吸い込まれていく。

(なんて綺麗な歌……!)

やがて歌が終わり、村人達がいっせいに花吹雪を散らす。

ビッキー「○○、行こう」

ビッキーさんに手を引かれ、私達は少し離れた場所へと移った。

ケロタ「どうだ、どうだ!?」

○○「どうですか? 何か感じますか……?」

ビッキー「ケロタ、何か感じる?」

ケロタ「いや、オマエは?」

ビッキー「いや……何も感じないよ」

ケロタ「まだわかんないぞ。よし、離れてみよう」

そうして、二人は反対方向に向かって歩き出す。

けれど……

ケロタ「わわわわわー-!!」

しばらく行くと、ケロタはビッキーさんの肩に戻ってきてしまった。

(駄目だった……“至福のメロディー”じゃなかったんだ……)

ケロタ「またか……」

ビッキー「……ケロタ、また探そう」

うなだれてしまったケロタを、ビッキーさんが励まそうとする。

ケロタ「……いつまで」

ビッキー「……ケロタ?」

ケロタ「いつまでこうなんだよ!」

(ケロタ……!)

叫びにも似たその声に、波の音が重なる。

ケロタ「ワシはもう、呪いはうんざりだ!! いつまでオマエとべったりしてなきゃならないんだよ!!」

ビッキー「……!」

ケロタはビッキーさんの肩から飛び降りると、すぐ傍の湖にもぐってしまった。

(ビッキーさん……)

ビッキーさんは、湖面の水紋を見つめ、ぎゅっと拳を握る。

ー----

ビッキー『今はいつでもケロタが傍にいてくれるし。 ……ケロタは優しいから。 僕が頼りないから、面倒見てくれてるんだよ』

ー----

(ビッキーさん……ケロタ……)

○○「ビッキーさん……」

しばらくの沈黙の後、ビッキーさんがこちらを振り返る。

ビッキー「……変なところ見せちゃって、ごめんね」

ビッキーさんの瞳は、怖いくらいに静かに微笑んでいる。

握りしめられた彼の拳が、微かに震えていた…―。

 

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