幻惑の国・ロトリア 宙の月…-。
もうすぐ開催される収穫祭に招待された私は、祭りの主催国であるここ、ロトリアへと久しぶりにやって来ていた。
ロトリアの城下町は、収穫祭に集まった人でいっぱいで、かなりの賑わいを見せていた。
(なんだかワクワクしてきちゃった)
次々に装飾されていく街の様子を見ていると、期待に胸が弾んでくる。
同時に、私はロトリアの王子であるロルフ君のことを思い出していた。
(ロルフ君、元気かな)
優しくてちょっと気弱な王子様の姿を思い浮かべながら、城へ向かうと…-。
ロルフ「……○○ちゃん……」
廊下の向こうから現れたロルフ君は、今にも泣き出しそうな顔で私の元へ歩み寄ってきた。
○○「ロルフ君? どうしたの?」
ロルフ君が服の裾を、小さな両手でキュッと握り締める。
白くてなめらかな頬が、心なしか青ざめて見えた。
ロルフ「……助けてください」
そう言って顔を上げたロルフ君の目元から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
○○「な、何があったの?」
ロルフ「実は……」
廊下の窓から差し込む柔らかな日差しが、ロルフ君の涙をまるで宝石のようにキラキラ輝かせた…-。