月最終話 水底の景色

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シャオ『○○さん、今日こそは二人の時間を過ごしましょうか?』

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シャオさんに手を引かれるまま連れてこられたのは、あの街はずれの湖だった。

シャオ「……」

私の手を握る彼の力が、とても強い。

○○「シャオさん……?ど、どうしたんですか?」

シャオ「どうもこうも、私はただ自分の想いに素直になることにしただけです」

○○「……?どういう意味ですか?」

真意の読めない言葉に、彼の顔を見ようとする。

その時…―。

シャオ「おっと……」

○○「えっ、シャオさん!?」

腕を掴まれた感覚がなくなったと思った時には、もう遅かった。

シャオさんは水際に生えていたツタに足を取られ、湖へ落ちそうに…―

○○「危ない……っ!!」

彼を助けようと伸ばした手が、確かにその手を掴んだ時……

大きな音と共に、誰もいない湖に水しぶきが上がった。

……

(……私、どうなったんだろう?)

(確か、足を滑らせたシャオさんを助けようとして、二人そろって湖に……)

○○「あれ……?声が出る……息も苦しくない?」

不思議と温かなものに包まれている気がして、私は恐る恐る目を開いた…―。

○○「え、これは……!?」

目の前には、出会った時と変わらない優しげな笑みを浮かべるシャオさんがいた。

温かいと感じたのは、しっかりと私の腰を支える彼の腕で……

だけどそれ以上に不思議なのは…―。

○○「ここは……湖の底!?」

確かに景色は水の中なのに、体は大きな気泡に包まれ、少しも濡れていない。

見上げると、湖の水面が太陽の光に輝きながら、きらきらとたゆたっていた。

○○「シャオさん、これは?」

青い瞳を見つめると、少し意地悪な顔をしてシャオさんが笑う。

シャオ「もちろん、水の精霊の力ですよ? 水面に落ちる瞬間に、水を操って大きなシャボンを作ったんです」

○○「え……?」

シャオ「ふふ……水の精霊の力を司る私が、水際であんなヘマするワケないじゃないですか」

ゆらめく水面から差し込む光が、彼の瞳を妖しく輝かせる。

○○「もしかしてさっきの……わざと湖に落ちたんですか!?」

シャオ「おや、バレちゃいましたか!」

くすりと笑って、シャオさんは私の耳に唇を寄せる。

ふわりと彼の長い髪が私の頬をくすぐった。

抱き寄せられたままの距離……

スチル(ネタバレ注意)

深く蒼い水の底の別世界には、私達二人しかいなかった。

シャオ「ここなら、もう誰にも邪魔されないでしょう?」

そう言って、シャオさんは私の腕を彼の首筋に添えさせた。

○○「え……?」

至近距離で見つめられて、いつしか胸が高鳴り始めて……

シャオ「本当は、あなたをずっとこうして独り占めしたかったんです。 だけど、あなたは素敵な笑顔で、すぐに人を惹きつけてしまうから……」

○○「そ、そんなことは……」

シャオ「他人に嫉妬して、自分の気持ちに気づくなんて、私もまだ若いですね」

○○「嫉妬……?」

シャオ「はい。わたし、あなたのことが好きになっちゃいました」

○○「……っ」

シャオさんの気持ちは、今確かに私だけに向けられていた。

そのことがこの上なく嬉しくて、けれど少し気恥ずかしくて……

○○「で、でも……わざと落ちるなんてイタズラな…―」

シャオ「その通り。こんな子どもっぽいイタズラをするわたしは嫌いですか?」

唇が頬に寄せられ、甘い声で囁かれる。

シャオさんの声はどこまでも澄んでいて……

耳元で囁かれると、その心地よさにうっとりしてしまう。

○○「……嫌じゃないです」

シャオ「でしたら、もう少しだけ……二人きりの時間を楽しみましょうか?」

囁きが耳元に注ぎ込まれたかと思うと、唇に柔らかな感触がやってきた。

シャオさんからのキス…―。

彼はそのまま私の体を水の中で抱きしめてくれて……

その幻想的な景色に酔いながら、私は彼の腕にすべてを委ねるのだった…―。

 

おわり。

 

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