少し湿り気のある風が、窓から吹き込んでくる…―。
(今日もシャオさんとはお話できていない……)
奉納の儀が終わって以降、またシャオさんは公務が忙しくなった。
(ますます、シャオさんを遠くに感じてしまう……)
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シャオ『……なーんて、あなたがあまりに楽しそうに話すから、ついからかっちゃいました』
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人懐っこい笑顔を思い出すと、胸が小さく痛んだ。
こうして青息吐息を続けてばかりいると、部屋の扉がノックされた。
侍女「○○様、最近気分が優れないようですが、外にでも出られてはどうでしょう? 本日でしたら、中庭でお茶会などの予定もありますので」
侍女の方が気遣わしげに、私に声をかけてくれた。
○○「……ありがとうございます、顔を出してみますね」
侍女「はい、でしたら後で人を向かわせますね」
侍女の方が部屋を出て行くのを見終えて、私は椅子から立ち上がった。
(このままじゃいけない、元気出さないと……)
…
……
その日の昼下がり…―。
私は従者の方に連れられて中庭へとやってきた。
従者「○○様は、お茶はどのようなものがお好みですか? 菓子などもいろいろと取り揃えております」
○○「ありがとうございます」
お茶会は城の重役が主催ということで、公務がなければシャオさんも参加予定だったらしい。
主催者の男「こんにちは、○○様、お話はシャオ様よりうかがっております。 何か城での滞在中に不便なことはございませんか?」
侍女「どうぞ、○○様、こちらレモンパイが焼き立てでございますよ」
○○「……皆さん、お気遣いありがとうございます」
侍女「いいえ、気にしないでください、それよりも早くあの笑顔を取り戻してくださいな。 でないとシャオ様が悲しみますわ」
主催者の男「ええ、その通りです」
○○「はい」
(この国の人達って、皆優しいな)
(シャオさんみたいな、柔らかさがあって……)
この国の人達が優しいのは、きっとシャオさんのような人が一族の長にいるから……
そう思うと、心にかかった雲はやがて消えて、澄んだ青空が広がっていくようだった…―。