○○さんとの間に距離ができてしまってから、数日…―。
シャオ「……えっとつまり、わたしの舞が、○○さんを、委縮させてしまったと」
(そういうことだったのですね)
(それなのに、わたしは……)
自分の愚かさに、笑いが込み上げてくる。
シャオ「わたし達は、お互いが勝手なことを思い込んでいたようですね。 お互いのことを想っていたのに」
わたしにつられるように、○○さんも笑い出す。
(こんなふうに声を上げて笑ったのはいつぶりでしょうか)
水面に穏やかな波紋が広がるようにわたしの心に温かな感情がしみ込んでいく。
シャオ「こんなことなら、ちゃんと話し合えばよかったんですね」
(つまらないことで不安にさせてしまいました)
(誰よりも大切な、あなたを……)
天真爛漫に微笑む彼女がまぶしく見える。
○○「本当に……私が勝手に、シャオさんとの距離を感じてただけで……」
(ですが……その距離も、あなたが縮めてくれました)
(こうしてわたしの元へと訪れるのに、どれほどの勇気が必要だったことか)
(それでも、あなたは扉を開けてくれたのです)
恥ずかしそうにうつむく彼女に、愛おしさが込み上げてくる。
するとその時、窓から入った優しい風が彼女の頬を撫でた。
シャオ「どうせ思い込むなら『私、シャオさんに好かれているのかしら』くらいにしてもらいませんと」
○○「えっ!?」
(あなたは気づいていないのですか?)
(どれほどわたしが、あなたを想っているかを)
(あなたに触れる風にすら、嫉妬してしまうのに……)
シャオ「……ふふっ」
顔を覗き込むと、澄んだ瞳と目が合った。
(……わたしの本心ですよ)
(あなたはもっと、自信を持つべきです)
○○「シャ、シャオさん……」
彼女が頬を赤く染める。
(ああ、なんてかわいらしいのでしょう……)
(その反応が、わたしを突き動かすのです)
シャオ「えいっ、スキありっ!」
○○「っ!?」
○○さんの鼻にキスを落とすと、彼女は顔を赤らめ、驚いたようにまばたきを繰り返している。
シャオ「……ふふ、油断しましたね?」
○○さんの頬がますます赤くなり、わずかに潤んだ瞳がわたしを見つめている。
そんな彼女を、ふっと微笑んで見つめ返し……
シャオ「少しこれから二人で、外に出ましょうか?」
(もっと、あなたという人を知りたい。そして……)
(わたしのことをもっと知って欲しい)
シャオ「わたし達はもっと互いの気持ちを知るために、同じ時間を過ごすことが必要なようですから」
想いを言葉に変えて、彼女に届ける。
すると……
○○「私も、もっとシャオさんとゆっくりお話をしたいです」
(そんなふうに言ってくださるなんて……)
彼女の小さな手を握りしめる。
(あなたの温もりを……離したくない)
(もっと、あなたを感じていたい)
小さな手を包み込むと、彼女も応えるように握り返してくれた。
そしてこちらを見つめると、恥ずかしそうに微笑む。
(その笑顔……)
窓から差し込む陽の光が、彼女を包み込むように照らす。
(その笑顔のためなら、私は……)
シャオ「さあ、行きましょう。あなたに見せたいものがあります」
○○「はい」
(わたしの持てる力すべてで、あなたを笑顔にしてみせます)
(あなたは喜んでくれるでしょうか)
わたしは、彼女の手を引いて歩き出す。
(……わたし達の距離は、○○さんのおかげで縮まりました)
(あなたが扉を開けてくれたように……今度はわたしが扉を開ける番です)
(二人の幸せな未来に続く、扉を……)
ドアノブに手をかけると、横に立つ彼女と目が合った。
その艶やかな赤い果実のような唇は、穏やかな笑みを湛えていて……
(美しいですね)
(次はもう、鼻では我慢できないかもしれません)
(ですから……覚悟していてくださいね?)
わたしは力強く扉を開け、○○さんの手を引き、歩き出す。
これから広がる二人の新しい世界を想像しながら…―。
おわり。