シャオ「私達は、お互いが勝手なことを思い込んでいたようですねえ。お互いのことを想っていたのに」
私達は安堵すると、声を上げて笑い合った。
シャオ「こんなことなら、ちゃんと話し合えば良かったんですね」
○○「本当に……私が勝手に、シャオさんとの距離を感じてただけで……」
シャオ「どうせ思い込むなら『私、シャオさんに好かれているのかしら』くらいにしてもらいませんと」
○○「えっ!?」
シャオ「……ふふっ」
にこにこと、けれど意地悪そうに笑いながら、シャオさんが私を覗き込んでくる。
○○「シャ、シャオさん……」
彼の言葉に、頬が赤く染まった時…―。
シャオ「えいっ、スキありっ!」
○○「っ!?」
鼻の頭に柔らかいものが押しつけられて、私は混乱に息を止めた。
(今の……シャオさんの、唇!?)
一気に頬に熱を感じ、頭の中が沸騰しそうになる。
シャオ「……ふふ、油断しましたね?」
驚いて瞬きを繰り返すばかりの私を、シャオさんが楽しそうに眺めている。
シャオ「少しこれからふたりで、外に出ましょうか?私達にはもっと互いの気持ちを知るために、同じ時間を過ごすことが必要なようですから」
○○「は……はい」
息を整えながら、私も自分の気持ちをはっきりと言葉にする。
○○「私も、もっとシャオさんとゆっくりお話をしたいです」
そう言うと、シャオさんの綺麗な手が私に伸びてきて……しっかりと私の手を握ってくれた…―。
……
それから私達は手を繋いで、城の中庭へ出た。
どこまでも続く青い空、その空に浮かぶ白い雲。
そして……
シャオ「ほら、見てください!○○さん!」
○○「……!」
シャオさんが水の精霊の力を使い、中空に虹を描く。
まるで生きているかのように流れを作る、躍動的な水が輝いて……
その美しさに、私は初めてこの国を見て回った時の感動を思い出した。
○○「すごいです……!前に子ども達相手に見せていたのも素敵だったけど、これはもっと素敵です!」
シャオ「でしょう?もっと褒めてくれてもいいんですよ。わたしはあなたがそうして楽しそうに笑ってる顔が大好きなんですから。褒められたらもっと調子に乗って頑張っちゃうかもしれません」
冗談じみた言葉に、私は声をあげて笑うことで応える。
○○「でも、本当にシャオさんの手から生まれるものって、なんでこんなに美しいんでしょうか。舞も、この国の水の流れも。こんなに綺麗なのは、きっとシャオさんの心が美しいから……」
素直に気持ちを言葉にすると……
シャオ「……○○さんっ!」
シャオさんの頬が赤くなった。
シャオ「まったく、素直なあなたが言うと冗談に聞こえませんよ」
○○「じょ、冗談なんかじゃないですよ!私は本当に…―」
言い募ったその時…―。
○○「……っ」
シャオさんのたおやかな手が、私の両頬を包んだ。
ひんやりと心地良い彼の手のひらが、慈しむように私の頬を撫でる。
シャオ「本当に……なんてあなたは可愛らしいんでしょう」
そして…―。
彼の顔が近づいて、柔らかな唇が私の唇に落とされる。
その口づけに、私は水の中に溶け込むような感覚を覚える。
空を映して美しく輝く水が、きらきらと私達の周りを舞い踊っていた…―。
おわり。