シャオさんの舞の後も、オンディーヌの宮司さんが奉納の詞を精霊に捧げたりと、奉納の儀はしめやかに行われた。
そして……
儀式がすべて終わる頃には、すっかり辺りは暗くなっていた…―。
私は暗くなったオンディーヌの街をひとりで歩いて城に戻った。
沈んだ気持ちは、戻らないまま……
城の回廊から見える暗い中庭に目を向けて、ため息をひとつ吐く。
その時だった。
シャオ「……○○さん!城に戻ってきてたんですね。 良かった、湖に姿がないから心配したんですよ」
○○「シャオさん……」
浮かない気持ちのまま顔を上げると、唇の端を歪め、怪訝な顔をしたシャオさんと目が合った。
シャオ「……どうかしたのですか?」
○○「えっ……いえ、何も……」
シャオさんの顔を、正面から見ることができない。
(こうやって話をしている時は、いつも近くに感じてたはずなのに)
(今は、すごく遠く感じる……)
胸の痛みを隠すように、私はうつむいた。
○○「あの……湖での舞、とても素敵でした……。 じゃあ、もう夜も遅いので私はこれで」
シャオ「え?○○さん、待って――」
彼に背を向けて、走り出す。
だけど…―。
シャオ「待ってくださいと言ったでしょう!」
○○「あ……っ」
腕を捕まれて、シャオさんを振り返る。
(どうして……?)
シャオさんの顔はどこか怒っているように見えた。
私の腕を掴んだまま離そうとしないシャオさんに……
○○「い、痛いです、シャオさんっ」
シャオ「っ、ごめんなさい!でも…―」
力こそ緩められたものの、彼は私の腕を離さない。
シャオ「どうして今夜はそんなによそよそしいのですか……?」
シャオさんは唇を引き歪める。
○○「なんでもありません……」
シャオ「なんでもなくはないでしょう!」
○○「少し具合が悪いだけですから……」
シャオ「体調が……大丈夫なんですか?」
○○「ご……ごめんなさいっ!」
シャオ「……っ!」
腕を掴む力が不意に緩められて、私はシャオさんの手から逃れると、そのまま走り去ってしまった…―。