太陽が天高く昇り、奉納の儀は始まった…―。
湖の水際近くに据えられた祭壇の上で、シャオさんが優雅に舞をまう。
私は少し離れた場所で、その様子を静かに眺めていた。
シャオ「……」
(すごい……)
指先を動かす所作ひとつ、足運びひとつとっても、それらは息を飲むほどに美しく……
○○「……」
今まで気軽に顔を合わせて笑いあっていたのが、幻のように思えてくる。
私の話を聞いて、いつも楽しそうにしていたシャオさん……
子ども達の望むままに空中に水の魚を泳がせてみせたシャオさん……
(あの姿は、きっとシャオさんの飾らないままの姿なんだろうけど……)
○○「……」
心臓が何かに締めつけられるような痛みを感じる。
その痛みに、ようやく自分が彼に惹かれ始めていたことを知る。
(あの人は、水の精霊の一族を統べる人……)
(柔らかくて、優しくて……一族の長としても、とても立派な人)
(私に優しくしてくれていたのも、きっと彼にとってはごく普通のことで……)
そんなことを思って、切ない気持ちになった…―。
そして、しばらくすると……
従者の男「よろしければ私がシャオ様に代わりこの儀式の解説をいたしましょうか?」
○○「えっ?」
私をこの場に案内してくれたシャオさんの従者の方が、気を遣ってくださって、私に耳打ちしてきた。
○○「えっと……」
戸惑いながら私は、曖昧にうなずいた。
すると従者の方は、胸元から取り出した扇で口元を隠すようにして、説明を始めてくれた。
その時…―。
シャオ「……」
シャオさんの視線を一瞬だけ感じたような気がした。
(今は大切な儀式中だし、気のせいかな?)
私が心の中で首を傾げるあいだ、従者の方は丁寧に解説をしてくれた。
(シャオさん……)
気付くと、彼を目で追ってしまう。
聞こうとしても、従者の方の言葉は、私の頭には少しも入ってこなかった…―。