少しずつ、シャオさんとの距離が近づいていくことを感じる…―。
彼との話はとても楽しくて、いつも心が穏やかになる。
(もっといろんなことをお話ししたい……)
そんなふうに思い始めていた、ある日のこと…―。
シャオさんと話をしたくて、私は城の中で彼の姿を探していた。
○○「あの、シャオさんの姿を見かけませんでしたか?」
回廊の奥から歩いてきた侍女に尋ねると……
侍女「シャオ様でしたら、街はずれの湖ではないでしょうか?」
○○「街外れの……?」
侍女が言うには、弱くなってしまった水に再び力を与えるために、シャオさんが水の精霊へ奉納の舞を捧げることになったらしい。
○○「じゃあ、シャオさんはその準備のために……ありがとうございます!」
私は話を聞くとすぐに城を出て、その湖へと向かった…―。
(ここは確か……)
ー----
城の使い『こちらの塔から見える湖は、一族にとって神聖な場所になっているんですよ』
○○『神秘的な湖なんですね』
ー----
(一族の神聖な場所……)
湖は想像よりずっと大きく、目を凝らしても対岸が見えないほどだった。
シャオさんの姿を探しながら、水際を歩いていると…―。
○○「あ……」
目の前の情景に、吸い込まれそうになった。
シャオ「……」
湖の浅瀬に素足で入り、シャオさんが舞っている。
動きに合わせて、彼のまとう透き通る水の羽衣が美しくたなびく。
(綺麗……)
シャオさんが天に杖を振りかざすと、水が螺旋を描きながら湖面から流れ上がる。
その姿はまるで、人の姿とは思えないほどに神秘的で、美しくて……
(……いつもとは、まるで別人みたい)
神々しい舞の様子に、私は……
(声が、かけられない……)
異世界のようなその光景に、踏み込んではいけないような気がして、私は遠くから、彼の姿を眺めることしかできなかった。
(どうして……胸が痛い)
一面に広がる青い空をそのまま映し込んだ水面を、シャオさんの足が滑る。
その青一色の世界が、切なく私の胸を打つ。
(どうして、こんなに胸が軋むんだろう)
(すぐそこに、シャオさんはいるのに……近づくことができない)
結局…―。
私はその場で、舞うシャオさんの姿を見続けることしかできなかった…―。
…
……
数日後…―。
実際に奉納の舞を納める日がやってきた。
あれからどうしてか距離を感じてしまい、私はシャオさんに自分から話しかけることができなかった。
けれど奉納の儀を前にシャオさんは、私に微笑みかけてくれた。
シャオ「せっかくだから、かっこいい姿を見ていってくださいね。 今日の舞は、オンディーヌに伝わるとても伝統ある綺麗な舞なんですよ」
○○「……はい」
(本当は、もう見ちゃったなんて言えないよね……)
美しく笑うシャオさんを前に、私は……
○○「頑張ってください」
そう言ったものの、つい声が沈みがちになってしまう。
シャオ「どうしたんです?いつもの○○さんらしくないですよ?」
○○「そ、そんなことないですよ」
シャオ「……?ならいいんですが……」
従者の男「では、○○様はこちらへ、ご案内いたします」
○○「……ありがとうございます」
シャオさんがつけてくれた従者の男の人についてその場を離れる。
固く握った手のひらは、どうしてか緊張に汗をかいていた…―。