それから数日が経って、ようやくシャオさんの公務も落ち着いてきた。
城で顔を合わせると、話をすることも多くなり、この日も、私達は偶然中庭で出会って…―。
○○「お仕事はもういいんですか?」
シャオ「はい。さきほどすべて終わらせたところですよ。 ○○さんさえよければ、この後お茶でも一緒にどうでしょう? オンディーヌは名水の湧く地としても知られています。美味しいお茶をご馳走しますよ」
○○「……楽しみです!ぜひご一緒させてください」
その後、シャオさんは中庭で簡単なお茶会を準備してくれた。
白いガーデンチェアに腰かけて、彼がお茶を淹れてくれるのを待つ。
シャオ「どうぞ」
○○「綺麗な色……これは?」
シャオさんが差し出したガラスのカップには、薄青色の水面が揺れていた。
シャオ「マローブルーのハーブティーです。ふふ……ずいぶんキラキラした目をするんですね」
○○「……っ」
テーブルに肘をついて、シャオさんは優雅に笑う。
半円を描く柔らかな口元が、女の人のように美しい。
(本当に綺麗な人……それに優しくて)
私は彼に見つめられる中、落ち着かない気持ちでカップに口をつけた。
○○「……美味しい!爽やかで香りも良くて。 以前に、お城でいただいた湧水も美味しかったけれど……お茶にするとこんなに美味しいなんて」
シャオ「それは良かったです」
にこにこと、シャオさんが私に笑いかける。
シャオ「湧水の他にも、ぜひオンディーヌを訪れての感想を聞かせてもらえますか?」
○○「はい、そうですね……。 このお城の中に張り巡らされた水路がとても綺麗でした。 特に二階の踊り場から、一階のエントランスの吹き抜けに繋がる噴水……とっても素敵ですよね」
シャオ「水は生命の源だけでなく、見た目でも人を楽しませることができますから。 他にはいかがですか?」
○○「あと……街のあちこちにある水車も涼しげで、心地よかったです」
笑顔を絶やさず、シャオさんは私の感想を引き出してくれる。
思わず時間も忘れて、この国で見たいろいろな場所の感想を彼に話した。
どこも本当に綺麗で、心が洗われるようなオンディーヌの風景……
シャオ「……」
話を聞き続けてくれたシャオさんが、私を見て目を綺麗に細める。
○○「……どうしたんですか?」
シャオ「いえ、あなたがあまりにも無邪気に話してくれるから……。 わたしのいるオンディーヌはそんなに素敵な場所だったんだなぁって、嬉しくなってしまいました。 ○○さんの目に映る世界は、きっと光にあふれているんでしょうね」
長くしなやかな指先がそっと伸びてきて、私の手に重なった。
○○「シャオさん……?」
思わず身を硬くするけれど、視線が離せなくなる。
シャオ「○○さん、どうしましたか?」
穏やかな声が、私の名前を呼ぶ。
重ねられた指先が熱くて、胸の鼓動が徐々に高くなっていくのがわかる。
○○「え、えっと……」
シャオ「……なーんて、あなたがあまりに楽しそうに話すから、ついからかっちゃいました」
○○「シャ、シャオさん……!?」
私が声を上げると、彼は口元を手で隠すようにして肩を揺らした。
中庭に流れる水のせせらぎが、絶え間なく静かに音を立てていた…―。