太陽最終話 僕の召使い

スノウフィリア城への帰り道…-。

夕陽が、降り積もった真白い雪に美しく色を与えている。

シュニー「……」

○○「……」

私とシュニー君は、無言でその道を歩いていた。

(……私、何か気に障ることでもしちゃったかな)

(さっきは笑っているように見えたんだけど……)

○○「ねえ、シュニー君」

シュニー「何?」

私の方を振り返ることなく、シュニー君はぶっきらぼうに返事をする。

○○「私、何か気に障ることしちゃいましたか?」

シュニー「へ?」

シュニー君が顔をくるりと私の方に向けて、大きな瞳を瞬かせる。

シュニー「何で?」

○○「だってさっきから、一言も話してくれないですし」

シュニー「そ、それは……」

言いにくそうに、シュニー君が口ごもる。

○○「何ですか?」

シュニー「召使いは知らなくていいんだ」

○○「召使いだからこそ、ご主人様のことを一番よく知りたいんです」

シュニー「……」

シュニー君はひとつため息を吐くと、諦めたように話し始めた。

シュニー「ありがとう、って……初めて言われたんだ」

○○「え?」

シュニー「そんなこと、今まで言われたことなかったから。 なんだか、ふわふわして落ち着かないんだ」

○○「シュニー君……」

照れくさそうに言うシュニー君の姿に、私の胸もいっぱいになる。

○○「……守ってくれて、嬉しかったです。ありがとう、シュニー君」

素直に心からでていた言葉を口にすると、かすかに顔の色を赤くして、シュニー君は胸を張る。

シュニー「……当たり前でしょ。 お前は僕だけの召使いだからね、しょうがないからこれからも僕が守ってあげる」

○○「うん」

二人で、微笑み合った後…-。

シュニー「でも、主人に手間かけさせるなんて、ダメな召使いには少し教育が必要だね」

先ほどの恥じらいはなんだったのか、小悪魔のような笑みを浮かべて私の顔を覗き込む。

○○「きょ、教育って……何をするの?」

シュニー「するのは僕じゃなくて、お前。 主人にはもっと敬意を払って貰わないとね」

○○「敬意……?」

シュニー「そう、僕の頬にキスしなよ」

○○「……っ、え!?」

シュニー君はあごを突き出して、私の前でピンと背筋を伸ばした。

シュニー「早くしろよ」

○○「ええと……」

(こ、こんな街中で?)

私が戸惑いうろたえていると…-。

スチル(ネタバレ注意)

シュニー「仕方ないなあ」

○○「え……?」

シュニー君が、私の隣からすっと顔を近づける。

すると、柔らかい唇が私の頬に押し当てられた。

○○「っ!」

(これって……シュニー君の……)

ふっくらとした唇はマシュマロのようで、くすぐったさに瞬きを繰り返す。

シュニー「わかった? こうするんだよ?」

くすりと笑って、シュニー君がもう一度、私の頬に唇を落とす。

再び感じたその柔らかさに、一気に顔に火照り、恥ずかしさに訳がわからなくなる。

○○「わ、わかりました、もう十分、わかったから大丈夫です……」

シュニー「あーあ、顔が真っ赤だね」

私から顔を離したシュニー君が可笑しそうに私を見て、目を細める。

○○「仕方ないですよ、道端でこんな……キスとかされたら……」

シュニー「だったら次は、○○からすること。いい?」

○○「っ、シュニー君、今私の名前……」

返事より前に、初めて彼の唇から聞きなれた名前を口にされて、トクンと胸が高鳴った。

シュニー「わかったの? ○○」

○○「はい……」

シュニー「うん、それでこそ僕の召使いだね」

シュニー君が私の頭を撫でて、満足そうに眉尻を下げる。

私の心は、すっかりこの小さなご主人様に、手懐けられてしまったようだった…-。

 

おわり

 

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