ナンパ男1「さあて、どうするんだ? 言っとくけど、次に妙な魔法使ったらこの女がどうなっても知らないからな」
シュニー「……」
シュニー君は、じりじりと後ろに後退して、男に追い詰められていく。
○○「シュニー君、私のことはいいから逃げて!」
堪らず私がそう叫んだ時、シュニー君の唇が不敵に弧を描いた。
シュニー「だから、お前達は愚かだって言ってるんだ」
ナンパ男2「はあ?」
シュニー「しゃがんで!」
○○「は、はい!」
シュニー君が私に向かって叫び、私が地面にしゃがみ込んだ、その時だった。
ナンパ男1「なっ!」
ナンパ男2「ぐあっ!」
突如、上空から大きな雪の塊が雪崩のように、男達に襲い掛かった。
それと同時に、私の頭上に氷の屋根がみるみるうちに出来上がっていく。
○○「……!」
私はその氷のおかげで難を逃れたけれど、男達は完全に雪の塊の下敷きになってしまった。
シュニー「僕が何もしてないわけないでしょ。 最初にひょうを出した時、上のテントに雪を降らせておいたんだよ」
○○「う、嘘……すごい……」
シュニー「ツメが甘いよね」
シュニー君は小馬鹿にした様子で、倒れこんでいる男達を見下ろしている。
○○「この氷も、シュニー君が?」
私の言葉に、シュニー君が手を腰に当てて、満足げに笑う。
シュニー「当たり前でしょ。雪の一族が、こんな低俗な奴らに負けるわけないよ」
(守ってくれたんだ)
○○「シュニー君」
シュニー「?」
○○「ありがとう」
シュニー「え……?」
お礼を言うと、シュニー君の赤い瞳が見開かれる。
シュニー「……」
彼はそのまま、頬をわずかに赤くしながら難しそうな顔になる。
(私、変なこと言ったかな?)
○○「だから……助けてくれて、ありがとうございました」
シュニー「……ぼ、僕はお前の主人だからな! 当たり前でしょ」
今度は、はっきりとシュニー君の頬が赤く染まっていることがわかる。
(もしかして……照れてる?)
ぷいと私に背を向け、シュニー君は歩き出そうとする。
シュニー「帰るよ。もう用事はすんだ」
その小さな背中を見つめていると、私の胸がなぜだかくすぐったくなる。
○○「……はい!」
シュニー君の斜め後ろを歩きながら、彼をそとうかがってみる。
夕陽に照らされたシュニー君の横顔は、微笑んでいるように見えた…-。