数日後…-。
一年を冬に包まれるスノウフィリアにしては、天気が良い日が続いている。
シュニー君が街に出たいと言うので、私は彼のお付きとして一緒に出掛けることになった。
(シュニー君と一緒にいるのは、楽しいけど……)
(いつまでも、召使いとしてここにいるわけにいかないよね)
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侍女『それにシュニー王子は一度言い出したら、兄のフロスト様の言うことでないと聞かず。 フロスト様は、もう間もなく戻られます。それまで、スノウフィリアにいていただけないでしょうか』
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(フロストさんは、いつ帰られるんだろう)
そんなことを考えていると…ー。
シュニー「おい」
前を歩くシュニー君が振り返り、左手を腰に当てながら私を眺める。
シュニー「ぼうっとしてるんじゃない」
○○「ごめんなさい。何か欲しい物でもあるんですか?」
シュニー「魔導書が欲しいけれど、それよりも散歩かな、お前と街を歩くのも悪くないからね」
○○「私と……?」
シュニー「うん。僕の召使いとしても板についてきたし、このあたりでお披露目ってところ」
(召使いとして、お披露目……)
返事に困り、曖昧な笑顔を向ける。
シュニー「愛想笑いするなよ、もっと普段僕といる時みたいな顔をして。 不細工な顔の召使いをはべらせてるなんて、僕の品位に関わるからね」
辛辣なことを言うシュニー君に私は……
○○「これでいいですか?」
シュニー君に向かって、にっこりと口角を上げる。
シュニー「そう、お前は笑えば可愛いんだから、僕を見習ってもっと自信を持たなきゃ。 さ、街を見に行くよ」
○○「あっ、待って…ー」
シュニー「待てない」
シュニー君が私の手を取り広場の方へ駆け出す。
(こういうところは、可愛いんだけどな)
そんなことを思いながら私は彼について走り出した。
…
……
広場は休日だけの古書市が開かれており、私はシュニー君のお使いで魔導書を探すことになった。
○○「ええと、青の書……青の書……どこだろう?」
手分けして探すために、ひとりでテントを回っていると、目の前を派手な格好をした男達に塞がれた。
ナンパ男1「お嬢ちゃん、探し物なら俺達が一緒に探してやろうか?」
ナンパ男2「俺ら余所から来たんだけど、道に迷っちまって困っててさあ」
○○「……あの、私は用事の途中なので……」
ナンパ男1「そうつれないこと言わずに俺達と遊ぼうぜ?」
色褪せた金髪の男が、私の腕を強引に掴む。
○○「……っ、やめてください!」
腕を振り払おうとしても、男の力は強く、私は柳のように体を揺らすことしかできない。
(どうしよう……!)
ナンパ男2「うるせえな、いいからとっとと付いて来いよ!」
○○「シュニー君……っ!」
男が声を張り上げたその時…ー。
シュニー「おいお前ら! そいつは僕の召使い。 その汚い手を離せ」
○○「……っ、シュニー君!?」
声に顔を上げると、いつの間に来たのか、シュニー君がこちらを見据えていた。
○○「危ないですよっ!」
シュニー「ふん。愚かなやつら」
シュニー君が右手を振りかざすと、手のひら大の吹雪が巻き起こり、男にひょうが降り注ぐ。
ナンパ男1「うわあああっ!」
(す、すごい……)
ナンパ男2「てめぇっ! よくもっ」
シュニー「……!」
しかしその隙に、横に居たもうひとりの男が、シュニー君に殴りかかろうとしていた…ー。