道に薄く残っている雪を踏みしめながら、街を越えてしばらく行くと…ー。
衛兵1「シュニー様!シュニー様がお戻りになられた!」
侍女1「お帰りなさいませ、シュニー様!」
彼の生まれたスノウフィリア城に到着すると、私たちは直ちに城の人々に囲まれた。
シュニー「ああ、みんな心配かけたね。変わりはない?」
衛兵「それが最近、雪があまり降らず。 フロスト様も外遊で、グレイシア様も相変わらず城にはあまりいらっしゃらないので……」
侍女1「スノウフィリアの雪の量が、少し減ってきています」
(フロスト?グレイシア?)
その名前を心の中で反芻していると…ー。
シュニー「なんだ、そんなこと……おい、お前」
○○「はい?」
シュニー「聞いたでしょ、雪、降らせて」
○○「え!?」
突然の発言に戸惑う私を見て、シュニー君がため息をついた。
シュニー「僕の下僕ならそれくらいはできるでしょ?」
○○「私がですか?!」
当然、といったように私を見ているシュニー君に…ー。
(い、意地悪されているのかな?)
(悪気があって言ってるようには見えないけど……)
○○「あ、あの……見本を見せてもらえますか?」
シュニー「ああ、そうだったよね、まだお前は新入りの下僕だもの。 いいよ、僕が特別にお手本を見せてあげる」
得意気に胸を張り、シュニー君が大きく頷いた。
シュニー君が天を仰ぎ、曇天に指先で円を描く。
すると…ー。
しばらくして、粉雪が地上に舞い落ちてきた。
衛兵「おお、スノウフィリアはやはりこうでないと!」
○○「……!」
(本当に雪が降ってきた……)
見たこともないようなパウダースノウに、雲から時折差し込む光が中空でキラキラと反射する。
シュニー「ね、どう?」
○○「すごいです! しかもとても綺麗……」
シュニー「これくらい当然だよ。だって僕は雪の国の王子だからね」
不意に、シュニー君が私から瞳を逸らす。
(あ……)
彼の柔らかそうな頬は、ほんのりと赤く染まっていた。
(シュニー君、照れてるのかな)
彼のその様子に、自然に笑みがこぼれてしまう。
○○「無事にお城に着いたし、じゃあ私はこれで…ー」
一礼をして、城の外に出ようとすると…ー。
シュニー「何言ってるんだよ。お前は僕の下僕だろう? ほら、行くよ」
シュニー君の小さくて白い手が、私の手を浮かんで、城の中へと歩き出す。
(……そういえば私、下僕として連れてこられたんだった)
しっかりと掴まれた手を振りほどくこともできず、私はシュニー君の後に続く。
彼が降らせた粉雪が、私の頬にふわりと舞い落ちてきた…ー。