おばあ様の誕生日パーティが無事に成功した後…―。
〇〇「リッツさ…-!?」
〇〇と二人きりになったオレは、彼女をソファーへと押し倒していた。
〇〇「っ、ま、待ってくださいっ!」
〇〇が、肩を掴むオレの手を跳ねのけようとする。
けれど、男であるオレの力に敵うはずもなく……
(やばい。気持ち、抑えられない……)
彼女はオレの手を掴んだまま、困惑したような表情で見上げている。
リッツ「……」
不安げな目をする彼女と視線がぶつかった。
(……本当にカワイイな)
戸惑う彼女に対し少し悪いなと思いながらも、こうして目の前の彼女を見つめていると、胸がどんどんと高鳴ってくる。
〇〇「……!」
そうして少しの間、じっと彼女を見つめていると……
彼女の困惑した表情が、驚きの表情に変わった。
(ん……?)
彼女の視線を追い、ふと周りを見回すと……
ついに暴走してしまったオレの力により、皿が割れて破片が辺りへ飛散しているようだった。
リッツ「ごめん……ちょっと、力が暴走しちゃってる」
怖がらせてしまっていることを申し訳なく思いながら、視線を〇〇へと戻し、熱をはらんだ目でじっと見つめる。
〇〇「リッツさん……?」
リッツ「いきなりごめん……けど気持ちが、抑えられなくて……。 オレ、キミのこと……〇〇のこと、多分、好き。 正確には、好きになり始めてる……」
オレは少しずつ、胸の中の想いを口にする。
リッツ「だから……こんないきなりで、酔った勢いに任せて悪いけど」
(あー……なんでこんなドキドキするんだろう)
少しの間、緊張から言葉が途切れてしまった。
(他の女の子に、こんなふうになったことないのに……)
うるさく鳴る心臓に、〇〇がオレにとって特別な存在だと思い知る。
(だっせえ……いつも軽口叩くくせに、肝心な時にこれかよ)
自嘲の念を悟られないように、オレは真剣な表情を保とうとした。
(……キミは、信じてくれるかな?)
(オレの気持ち、たとえ酔ってたって嘘偽りない本物だって……)
(だから……キミに受け止めて欲しい)
そうしてオレは、覚悟を決め…-。
リッツ「キミの運命の人がまだいないなら……オレのこと選んで」
小さくそう囁いた後、そのまま彼女の首元へと顔を近づけた。
リッツ「ねえ……いいでしょ」
彼女の首筋に、わざと吐息を吹きかけるようにして囁く。
けれども、〇〇がどうしても拒むのであれば、これ以上はしないつもりでいた。
(まあ、拒まれちゃうのはさすがに傷つくけど……)
(〇〇を傷つけるよりは、何倍もマシだからね)
そう思いながら、彼女の返事を待つ。
すると…―。
〇〇「……」
(え……?)
オレを拒もうとしていた指から、力が抜けていく・
(これ、って……)
(……そっか……)
(……そっか、よかった……!)
オレを受け入れてくれた〇〇に、胸の奥から安堵と喜びが混ざり合ったような感情が湧き出してくる。
リッツ「うん、ありがと……」
オレは彼女の耳元で心からの感謝を込めながら、そう一言告げるだけで精一杯だった。
(……オレはもう、キミしかいらないよ)
(他の女の子達と触れ合えなくても全然構わない。オレは……キミに触れられれば、それでいい)
そうしてオレは、大切な彼女を壊してしまわないよう……
胸の衝動を、溢れる感情を精一杯制御しながら、長い長い時間、彼女の体を包み込んでいた…―。
おわり。