無事にパーティーを終えて…-。
私達は人のいなくなったホールで後片付けをしていた。
使用済みのお皿を重ねて、洗い場に運ぶためにワゴンへ載せる。
リッツ「手伝ってくれて、ありがと」
〇〇「いえ、おばあ様が喜んでくださって良かったですね」
リッツ「……うん」
軽く頷いた後、リッツさんはうつむいてしまった。
(リッツさん……?)
しばらくの沈黙の後、再び彼の顔が上げられたかと思うと……
リッツ「……〇〇」
見たこともないくらい、真剣な眼差しが私を射抜いていた。
〇〇「リッツさ…-!?」
言葉も出切らないまま、私の身体はリッツさんの手によって、その場にあったソファーに倒された。
〇〇「っ、ま、待ってくださいっ!」
きつく掴まれた肩を跳ねのけようとする。
けれどリッツさんの手はびくともしなくて、見上げれば……
リッツ「……」
赤くなった目元を潤ませるリッツさんと視線がぶつかった。
(リッツさん? まだパーティーで飲んだお酒が残ってるの……?)
胸が徐々に高鳴りを覚えていく。
〇〇「……!」
リッツさんの周りの空気がぼんやりと光ったかと思ったら、パリンとお皿が割れて、破片が辺りに飛散した。
リッツ「ごめん……ちょっと、力が暴走しちゃってる」
少し熱のはらんだリッツさんの瞳が私を捕えて離さない……。
〇〇「リッツさん?」
リッツ「いきなりごめん……けど気持ちが、抑えられなくて……。 オレ……キミのこと――〇〇のこと、多分、好き。 正確には、好きになり始めてる……。 だから……こんないきなりで、酔った勢いに任せて悪いけど……」
少しの間、言葉が途切れる。
次に小さく囁かれた言葉は…-。
リッツ「キミの運命の人がまだいないなら……オレのこと選んで」
そのまま、彼の顔が私の首元に近づけられる。
いつも陽気で明るいリッツさんとは全然違う、真剣な声色と眼差し……
リッツ「ねえ……いいでしょ」
吐息を首筋に感じ、鼓動が激しくなっていく。
(どうしたらいいんだろう……)
これまでのいろんなリッツさんの表情が頭を駆け巡る中、私の胸に一番残っているのは、おばあ様を前にした時の、柔らかで思いやりに満ちた顔……
〇〇「……」
その顔を思い出して、彼を拒もうとしていた指から力が抜けていく。
リッツ「うん、ありがと……」
耳元に聞こえた声は、かすかに安堵したような響きが含まれていて……
私はそのまま彼の、激しくも優しい温度に包まれ続けた…-。
おわり。