おばあ様の誕生日パーティが無事に成功した後…-。
オレ達は思いがけず部屋で二人きりになってしまった。
リッツ「……」
〇〇「……」
(……参ったな、さっきからずっとこの調子だけど……)
今まで味わったことのない気恥ずかしいような沈黙に、胸は高鳴るばかり。
(おばあ様、なんだってあんなこと…―)
―――――
王太妃「貴方も、本当の恋を知ったかしら?」
―――――
(……)
(今まで、女の子と二人きりになることなんて数えきれないぐらいあったのに……)
どきどきと高鳴る胸の鼓動に、どうしたらいいかわからなくなる。
ちらりと横を見ると、〇〇もどこか居心地悪そうにもじもじしているようだった。
リッツ「あ~~、今まで深く考えたことなかったから、わかんないけど!」
〇〇「え……っ!?」
初めて感じる戸惑いと、この場を支配する気恥ずかしい空気に耐え切れなくなったオレは、思わず大きな声を上げながら目の前の〇〇を抱き寄せる。(うわ……これ、やばいな)
彼女をぎゅっと抱きしめた瞬間……
胸の奥に、彼女を初めて抱きしめた時にはなかった甘い疼きを覚える。
(なんでだ? 他の女の子を抱きしめる時だって、こんなことなかったはずなのに……)
生まれて初めて味わう感覚にオレが翻弄されていると、彼女は驚いたような表情を浮かべながら、腕の中からオレの顔を見上げてきた。
(……っ! やばい、すげーカワイイ……)
オレを見上げるその表情に、思わず心臓が跳ね上がる。
そうしていよいよ我慢の限界を迎えたオレは、目の前の彼女に胸の衝動をストレートにぶつけた。
リッツ「あのさ、キスする気になった?」
〇〇「え? あの……え??」
吐息を感じるほどの距離で瞳を瞬かせる〇〇に、胸を支配する甘い疼きが大きくなる。
リッツ「そろそろ……いいんじゃないの? オレ……変なんだよ、他の女の子が相手の時はそんなことなかったのに。 キミ相手だと、なんでか妙にどきどきする……」
〇〇「リ……リッツさん?」
オレの言葉を聞いた〇〇は、ただひたすらにオレの顔を見上げている。
(……全く)
リッツ「……もうっ、キミ、仕方ないなぁ」
〇〇「あ……」
戸惑うばかりの彼女に痺れを切らしたオレは、柔らかい頬にキスをした。
それは額に触れた軽い挨拶でもなくて、優しさでもない……たくさんの想いを込めた熱いキス……
リッツ「本当の恋って、じれったいものなんだね」
そう言って悪戯っぽく笑うオレに、〇〇の頬はますます染まっていく。
リッツ「今は、これくらいで許してやるけど……次は覚悟しておいてよ。 あとオレのことも、リッツさんじゃなくて、リッツって名前で呼んで」
〇〇「な、名前……リッツ……?」
(あ……)
(名前で呼ばれただけなのに、オレ……)
(やばい。すっげー嬉しい……!)
恐る恐るといった様子でオレの名前を呼ぶ〇〇に、胸が熱くなる。
リッツ「うん、〇〇」
オレは愛しさを込めて彼女の名前を呼ぶ。
そうしてもう一度、オレは彼女の頬に口づけ……
(これからは、キミだけを大切にするから)
心の中でそう誓いながら、柔らかに彼女を抱きしめるのだった…―。
おわり。