おばあ様が先代の王様から贈られた思い出の花……
その珍しい花を探すために、私は花畑を隈なく探す。
〇〇「……なかなか見つかりませんね、私もっと奥の方見てきます」
リッツ「うん……」
〇〇「……?」
リッツ「……ううん、なんでもない」
首を左右に振ったリッツさんが私を見て、恥ずかしそうに笑う。
リッツ「本当にありがと、おばあ様のためにそんな一生懸命探してくれて……。 オレも頑張るから、必ず見つけよう!」
〇〇「……はい! おばあ様に笑顔になってもらいましょうね」
…
……
こうして私達は夕方頃になり、ようやく例の花の咲く群生地を見つけた。
リッツ「この花だ!!」
小さな花弁をつけた黄色の花達が、風に優しく揺れている。
〇〇「よかったですね」
リッツ「……」
いつになく神妙な表情で、リッツさんが花を見つめている。
(リッツさん……?)
リッツさんは静かにその場にしゃがみ込み、花を一本摘み取った。
そして……
〇〇「!」
彼は立ち上がって、その花を私の髪にそっと飾る。
〇〇「リッツさん……?」
夕陽に照らされたリッツさんの顔が、なぜだかとても凛々しく見えて、胸が小さく音を立て始めた。
リッツ「……おばあ様もさ、若いころはオレみたいに、いーっぱいコイビトがいたんだって」
〇〇「え……?」
リッツさんの顔が、優しく綻ぶ。
リッツ「だけど、おじい様と出会って……本当に好きな人と巡り会えたって。 いつまでも……おじい様が死んじゃった今でも、思い出すだけで胸がドキドキするんだって」
慈しむように私の髪を撫でた後、リッツさんの手が離れていった。
〇〇「素敵ですね……」
リッツ「オレはずっと、そういうのわからなかったけど…-」
そこで、言葉が一度途切れて……
リッツ「キミといると……ちょっと、わかる気もする」
それは、ほとんどつぶやくような、小さな声で紡がれた。
〇〇「……」
何と言っていいかわからず、ただ彼をじっと見つめることしかできずにいると……
リッツ「あ! 何言ってんだろ、オレ!」
リッツさんは、ごまかすように頭を掻いた。
リッツ「さ、早くしよ!! 暗くなっちゃう」
〇〇「は、はい……」
そうして私達は、花を摘み始めるけれど……
(胸が……)
かすかに生まれ始めている甘い感情に、私はまだ名前をつけられないでいた…―。