太陽7話 夕陽の中の彼

おばあ様が先代の王様から贈られた思い出の花……

その珍しい花を探すために、私は花畑を隈なく探す。

〇〇「……なかなか見つかりませんね、私もっと奥の方見てきます」

リッツ「うん……」

〇〇「……?」

リッツ「……ううん、なんでもない」

首を左右に振ったリッツさんが私を見て、恥ずかしそうに笑う。

リッツ「本当にありがと、おばあ様のためにそんな一生懸命探してくれて……。 オレも頑張るから、必ず見つけよう!」

〇〇「……はい! おばあ様に笑顔になってもらいましょうね」

……

こうして私達は夕方頃になり、ようやく例の花の咲く群生地を見つけた。

リッツ「この花だ!!」

小さな花弁をつけた黄色の花達が、風に優しく揺れている。

〇〇「よかったですね」

リッツ「……」

いつになく神妙な表情で、リッツさんが花を見つめている。

(リッツさん……?)

リッツさんは静かにその場にしゃがみ込み、花を一本摘み取った。

そして……

〇〇「!」

彼は立ち上がって、その花を私の髪にそっと飾る。

〇〇「リッツさん……?」

夕陽に照らされたリッツさんの顔が、なぜだかとても凛々しく見えて、胸が小さく音を立て始めた。

リッツ「……おばあ様もさ、若いころはオレみたいに、いーっぱいコイビトがいたんだって」

〇〇「え……?」

リッツさんの顔が、優しく綻ぶ。

リッツ「だけど、おじい様と出会って……本当に好きな人と巡り会えたって。 いつまでも……おじい様が死んじゃった今でも、思い出すだけで胸がドキドキするんだって」

慈しむように私の髪を撫でた後、リッツさんの手が離れていった。

〇〇「素敵ですね……」

リッツ「オレはずっと、そういうのわからなかったけど…-」

そこで、言葉が一度途切れて……

リッツ「キミといると……ちょっと、わかる気もする」

それは、ほとんどつぶやくような、小さな声で紡がれた。

〇〇「……」

何と言っていいかわからず、ただ彼をじっと見つめることしかできずにいると……

リッツ「あ! 何言ってんだろ、オレ!」

リッツさんは、ごまかすように頭を掻いた。

リッツ「さ、早くしよ!! 暗くなっちゃう」

〇〇「は、はい……」

そうして私達は、花を摘み始めるけれど……

(胸が……)

かすかに生まれ始めている甘い感情に、私はまだ名前をつけられないでいた…―。

 

<<太陽6話||太陽最終話>>