よく晴れた翌日…-。
私は部屋で、昨日のリッツさんの言葉を思い出していた。
―――――
リッツ『……おばあ様、元気そうに見えるけど、ここのところ体調崩し気味なんだ』
リッツ『だから医者にも城の外に出るなって言われてて……』
リッツ『だからオレ、今度のおばあ様の誕生日には何か喜んでもらえそうなことしたいんだけど……』
―――――
(喜んでもらえそうなこと、か……)
いろいろと考えてはみるものの、いい案が思い浮かばない。
私は、気分転換に中庭へ出ることにした…-。
…
……
(あれ……?)
リッツ「うーん」
難しそうな顔をして、リッツさんがひとり腕を組みながら、中庭にたたずんでいた。
(リッツさん?)
〇〇「リッツさん」
リッツ「うーん」
声をかけても、リッツさんは私にはまるで気づかない様子で……
(何か、考え込んでいるみたい……)
すると……
リッツ「あーーだめだ! 思いつかない!!」
大きな声を上げて、リッツさんが頭を掻いた。
リッツ「あれ」
そこで初めて、彼の大きな瞳が私に向けられる。
リッツ「やあ! どうしたの?」
〇〇「あ……ちょっと考え事を、と」
リッツ「へ~、何か悩みでもあるの? オレでよかったら力になるよ!!」
〇〇「悩み事ってわけでもないんですけど……」
リッツ「じゃあ何? 教えてよ! オレ、キミのこと知りたいなあ」
(……!)
無邪気に笑う彼の顔が近づいて、私は恥ずかしさに視線を伏せた。
リッツ「ね、何?」
〇〇「そ、その……昨日リッツさんが言ってた、おばあ様のお誕生日のこと……」
リッツ「!」
リッツさんの瞳が、丸く見開かれた。
リッツ「考えてくれてたの?」
〇〇「あ……はい」
リッツ「……」
リッツさんは何も言わず、じっと私を見つめている。
(リッツさん?)
〇〇「もしかして……お節介でしたか?」
彼の気持ちがうかがえず、恐る恐るそう尋ねると……
リッツ「ううん!」
次の瞬間、リッツさんは、ぱっと花のような笑顔を咲かせた。
リッツ「すっげー嬉しい!!」
(あ……)
満面のその笑みに、私の心にも温かさが広がっていく。
リッツ「困ってたんだよ! 一人じゃいい案が浮かばなくて。 かといって、あんまり相談できるヤツもいないし」
〇〇「リッツさん、お友達多いのに?」
私の言葉に、リッツさんが小さくため息をつく。
リッツ「昨日言ったでしょ? 軽い感じで皆受け取るからさあ。 キミ、難しい顔してるから何だろうって思ったら、おばあ様のこと考えてくれてたなんて!」
リッツさんの真っ直ぐな眼差しが、私に向けられて……
リッツ「真剣に考えてくれたんだよね。ありがとう」
〇〇「……っ」
リッツ「昨日も、オレにアドバイスしてくれたしね。 ね、じゃあ、二人で一緒に考えようよ!!」
すっと、リッツさんの手が差し出される。
〇〇「……はい!」
自然に、私はその手を取った。
(不思議な人……会った時は、苦手かなって思ってたけど)
彼の手のひらに、私は確かな温かさを感じていた…-。